シリア内戦が発生してから10年が経ちました。2010年12月にチュニジアで始まった反政府抗議デモは、「アラブの春」と呼ばれる民主化運動に発展し、民主化の動きがシリアに波及した当時は、改革を求める平和的な抗議デモでした。ロシア、トルコ、サウジアラビア、イランなど周辺の国々の干渉の中でシリアの多くの地域で空爆が行われ、正確な数字は分かりませんが、子どもたちまでが命を落としました。現在も、反体制派が北西部のイドリブ県を支配していますが、シリア政府軍が国土の7割以上を制圧しています。2020年末時点で戦闘を逃れて自宅を離れた国内避難民は670万人にのぼりましたが、一方で44万8千人が帰還しています。ヨルダン、レバノンなど難民を受け入れてきた周辺国も、その財政負担や政治的混乱から難民の帰還を求めています。しかしながら、政治的解決がなされないまま、国内での復興はほとんど始まっていません。
故郷に帰った人びとは、破壊されつくした故郷に直面します。避難している間に内戦で家が破壊され、電気や水道などのインフラが再建されておらず、安心して生活をスタートする環境が整っていません。産業の復興もできていないので、戻っても仕事がないなど様々な困難に直面しています。
困難を抱えているのは、国内避難民や帰還民だけではありません。シリアには、1948年のイスラエル建国により、多くのパレスチナ人が避難し、現在55万人のパレスチナ難民がシリア国内で生活しています。彼らの中には、シリア内戦の発生により、二重難民となり、シリア国内或いは近隣諸国へ避難している人が多くいます。故郷を追われたうえ、さらに避難を余儀なくされた人びとは、親戚の家に身を寄せるなど家族で支えあいながらなんとか生活をしています。
長引く内戦はシリア経済にも大きな影響を与え、物資不足や国際的な経済制裁により物価は高騰し、主食のパンを買うことも困難な状況に陥っています。
そんな中、パルシックは2019年に食糧バスケットを配布し、特に生活に困難を抱えている人びとに最低限の食糧にアクセスできるよう食糧支援を開始しました。2020年からは、小規模ながら農業生産支援を開始し、自力で食糧を得られるように支援を続けています。