ガザ地区では約1割が女性を稼ぎ手とする世帯(夫を戦争などで亡くしたケース、シングルマザー、男性の稼ぎ手が病気や障害などで働けないケースなど)と言われますが、女性の失業率は約6割(ガザ地区の平均失業率は53.7%)、その貧困が喫緊の課題となっています。
ガザ地区はイスラエル-パレスチナの政治的状況や、2007年以来続く封鎖により物資や人の移動が厳しく制限されています。他方、ガザ地区の酪農や農業で使う飼料、農薬や化学肥料、有機たい肥などはその多くをイスラエルや海外からの輸入に依存しています。不安定な流通は生計を大きく左右し、結果として生産者たちは脆弱な立場に置かれています。イスラエル市場への依存率を下げ、生産・生計の安定化を図るために、とりわけガザ地区では生産と消費の循環を生み出す“地産地消”の促進が求められています。
ラファ県は戦争や貧困の影響で、ガザ地区の中でも特に社会的脆弱層の多い地域の1つとなっています。事業では、貧困ライン以下の収入で生活している女性を稼ぎ手とする世帯を中心に、酪農生産・乳製品の販売活動を通した生計向上を目指します。
ガザ地区では、人口の約8割が国際機関の人道支援に頼っていると言われます。貧困世帯の食糧不足も著しく、親せきや知人に食料品や食料品購入のためのお金を借りている世帯は2018年 10月時点で47%、食糧の確保にも苦慮しています。パルシックでは、緊急支援の際から、特に、夫など世帯の稼ぎ頭を戦争で失い、収入の確保が難しい女性を稼ぎ手とする世帯に鶏やウサギ、鳩などの食用動物を配布して自宅庭で飼育してもらい、自家消費に充てると共に、余剰生産分を販売できるようにして収入向上支援を行ってきました。新しい事業では、食用動物生産の規模を拡大する形で、羊の畜産・酪農を小規模な女性グループで協働して行い、精肉・生乳・乳製品(ヨーグルトやチーズ)の販売を通して生計向上を支援するとともに、地域内の食糧供給に貢献することを目指します。
また、パレスチナでは、高額な飼料代が畜産を営む農家の負担となっています。畜産の生産コストの7割を飼料代が占めるといわれます。また、ガザ地区全域で深刻な水不足や地下水の塩水化が農業にも深刻な影響を及ぼしています。これらの問題に対応するため、女性グループとともに、飼料コストを抑えながら水の節約ができる、水耕栽培技術を用いた飼料の自家生産にも取り組みます。
※この事業は外務省NGO無償連携資金協力の助成および皆さまからのご支援によって実施しています。
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