ガザ地区の平均失業率は49%と世界で最も高いレベルに達しており、人口の54%にあたる101万人は4.6ドル/日以下、うち66万人は3.6ドル/日以下で生活し、極度の貧困に陥っています。なかでも女性の失業率は68%と男性より高く、女性が家計の担い手となっている世帯では、男性が世帯主の世帯より10%高い67%の世帯が食糧危機に直面しています。(2020年時点)
ジェンダー格差も根強くあり、畜産では女性の賃金は男性に比べて低く、その貢献は周囲からも女性自身からも過小評価されやすい傾向があります。エサやりや新生羊の世話などに女性が関われることは少ないうえ、男性優位の社会で外出の機会も少なく、情報へのアクセスが限られることから、女性が畜産の知識やスキルを向上させる機会に乏しい現状です。
この事業では、ガザ地区ハン・ユニス県の3つの村において、畜産農家の収入向上と女性のエンパワメントに取り組みます。1~3頭の羊を所有する小規模農家で、かつ女性が世帯主となっている世帯や女性が羊飼育に携わっている世帯を対象に、羊小屋の建替え工事、畜産技術研修を実施します。また、農家同士でグループを作り、協力して羊の飼育・販売を行い、地域全体の畜産技術の底上げを目指します。またグループごとに家畜のエサとなる作物を栽培して干し草を作り、高額な輸入飼料への依存と夏場のエサ不足を軽減します。さらに、女性を対象として羊の生乳を使った乳製品作りや、畜産に関するワークショップを行うことで、女性が畜産を通じて家計に貢献できるよう支援するとともに、社会で活躍する女性起業家などとの交流も行い、女性の家庭内での発言力の向上を目指します。
2021年より、ガザ地区南部で乳製品を加工・販売する女性協同組合に対し、チーズの製造およびマーケティング支援を行うことで、組合の継続的な活動を可能にし、女性たちの生計向上に取り組んでいます。2021年度は、市場で販売できる品質のチーズを安定的に生産できる体制を整えることができました。2022年度は、①商品の品質と生産量の向上、②販売先の拡大、③新商品の開発を目指します。
※この事業は日本NGO無償連携資金協力、日本連合組合総連合会・連帯活動局の助成及び皆さまからのご寄付によって実施しています。