PARCIC

シリア国内避難民・帰還民の生活支援事業

シリア国内での女性に対する食糧生産活動支援

2021年10月から開始した2期目の農業支援も徐々に軌道に乗ってきました。今期は前期事業からの農家支援に加えて、オリーブ農家の支援も行っています。農業というと力仕事が多く男性が多いイメージですが、男性が長期のシリア紛争で兵士として亡くなったり、紛争に巻き込まれ仕事が出来なくなったりした状況が多いことを考慮し、パルシックでは女性が参加できる食料生産活動として、前期はダマスカス郊外県での養鶏支援を行いました。

養鶏支援では、鶏が産む卵を食料として消費するだけでなく、余った分を販売して収入を得ることが出来たため、今期も新しい女性世帯での養鶏活動と、さらにホムス県とダマスカス郊外県の女性世帯で食品加工活動の支援を行っています。

長期の紛争の影響もありますが、欧米による経済制裁もシリアの経済事情に大きな影響を及ぼし、生活用品や食料の物価上昇の要因となっています。現在はそれだけでなく、ウクライナ紛争の影響もあり、この数か月でも物価がさらに上昇している状況です。ウクライナ紛争によるシリアでの食料事情は次回、少し詳しくお伝えする予定です。

食品加工活動では、シリア紛争前にそれぞれの家庭で何かしらの加工食品を作っていたけれど、紛争により収入が減り、加工食品が家で作れなくなった世帯や、安い食料品を代替品として購入し継続している世帯が、紛争前に行っていた従来の活動を再開できるように支援します。各世帯の食料事情が厳しい中、生き抜くために自分で消費したり、冬を越すために食料を保存したり、余った分は販売し生計を支える収入の一部となってくれればと願っています。

シリア国内では電気事情も悪く、一日の半分以上は停電しているため、冷蔵庫がなくても保存できる食品や、生産する加工食品を季節ごとに変えています。ホムス県では農業復興支援しているので、収穫の時期には支援農家から収穫物を直接購入して、食品加工に利用したりするなど、それぞれの活動が繋がるような工夫もしています。シリアでの生活環境は、シリア国内だけでなく外部の紛争も大きな影響があるため、支援する女性たちとは、知恵を絞りながらこれからも活動を続けていこうと思います。

活動の様子

配布されたミルクでヨーグルト生産中

できたヨーグルトとチーズ

紛争開始後はミルクの値段も上がったため、安い濃度の薄いミルクでチーズを生産していたが、配布のミルクがより濃厚なので、チーズの味がとてもいいとの声。

支援する女性の村での昔からのチーズの生産方法で、チーズの凝固を助けるためパンを一緒に混ぜている。

毎週1回20リットルのミルクを加工用に各世帯に配布

イスラム教徒のラマダン(断食)でよく飲まれるジュース作りの研修の様子

研修の様子

研修の様子

ミカン、レモン、ニンジンを利用してのジュース作り

生産されたジュース

チーズの作り方

1. 沸騰しないよう温める。温まったら、ミルクを固める凝乳酵素を小さじ一杯入れます。

2. 保温状態を保つために毛布を掛けると、だいたい2時間ぐらいで固まりだします。

3. チーズから水分を取り除く作業。手でチーズの塊を取り、絞っている様子。

4. 絞る際にガーゼを利用したりもします。

5. 更に手で押して水分をチーズから取り出したりもします。

6. 水分が取れたら、ナイフで小さく切っていきます。

7. こんな感じ。

8. 塩水に入った瓶に入れ保存。黒ゴマも最後入れるのが特徴。

※この事業はジャパン・プラットフォームの助成と皆さまからのご寄付で実施しています。

(レバノン事務所 大野木)