スリランカ女性組合の創設者 故ナンダシリ・ガマゲ氏と
あっという間に新型コロナウィルスが世界を席巻して、地球上の誰もが挨拶がわりにCOVID-19を口にし、脅えながらも新たな生活の工夫をする時代になりました。しかもその影響は均一ではなく、むしろ世界の不平等をあぶりだし、難民、不安定就労の人びと、孤立した世帯など、感染の恐れにとどまらずに生計の途や居住の場を失い、飢餓状態にまで至る大勢の人びとを生み出しています。
パルシックが働く各地の現場でのCOVID-19状況は、このホームページ上でも緊張感をもって適宜報告されています。とりあえず今できることをする、という緊急対応を迫られるとともに、オンラインを利用しながら新しい工夫も模索されています。発足以来のパルシックの活動は、紛争や貧困の現場での単発プロジェクトに終わらず、地域を越える持続的な交易関係に結びつけることに特色があります。他方、そのフェアトレードは、たんなる物流関係にとどまらず、生産者の社会環境の修復プロセスとつながっているところに独自性があると思います。
こうした活動を手がかりに、私たちは今の危機の中から、次の時代への人と人の関係を再生できるはずです。 永続的な発展(sustainable development)をめざすSDGsのスローガンは「誰ひとり取り残さない」ですが、それは単に、不利な立場の人びとを既存のシステムに拾い上げるセイフティネット施策だけを意味するのではなく、今の世界を変えていく(transforming our world)、という主張であることを思い起こしましょう。
共同代表理事 穂坂光彦
2002年、独立直後の東ティモールでコーヒー生産者とフェアトレードの取り組みを始めた頃、公正な対価でコーヒーを買い取ることで東ティモールのコーヒー生産者の暮らしは目に見えてよくなる、と思っていました。あれから20年。相変わらずコーヒーからの収入だけではバイク1台買うどころか大家族の生活を切り盛りするだけで精一杯の生産者と、互いに白髪の混じった頭を突き合わせて、これからどうやってコーヒー畑を子どもたちの代に引き継いでいくか、を話し合っています。
パルシックは民際協力で目の前にある問題に対処し、フェアトレードでその土地の人びとが息長く活動を続けていくことを支えます。対等な関係、といいつつも、事業予算や市場をもつこちらの側が常に優位であることは動かしがたい事実です。パルシックの目指す世界をきれいごとで終わらせないようにするにはどうしたらいいのか。割と真剣にそのことを考えながら現場を担ってきたことくらいしか誇れるもののないまま、2022年、パルシックの共同代表になりました。
パルシックが東京都葛飾区で「みんかふぇ」の取り組みを始めたことを東ティモール人に説明することは容易ではありません。親戚の子どもはみんな自分の子で、限られた食料をも分け合い困っていれば助けるのが当たり前の東ティモールでは、隣人と面識がない、一人で子どもを育てなければならない、という状況を理解することができないからです。わたしたちがコーヒーを買うだけではなく、コーヒーを作る人たちの側から学び社会を見つめ直してこそ、パルシックが目指す交易、交流はようやく成立するのだと思っています。
共同代表理事 伊藤淳子