パルシックが2012年から「山間部農民の生計向上事業」をアイナロ県マウベシ郡で実施してきましたが、その過程で、多くの集落で生活用水や農業用水へのアクセスが困難で、そのことによって生活改善ができずにいる状況を目にしてきました。
カフェティモールの産地でもあるマウベシは東ティモール中央部山岳地帯に位置する山間部農村地域です。毎年3ケ月から4ヶ月続く乾期にはマウベシの人びとは、農業用水はもちろん、生活用水にも困っています。
雨期には徒歩で約30分内にある水源が、乾期には約1時間もかけて遠くの水源まで水を汲みに行くことを余儀なくされ、子どもや女性の負担になっています。さらに、飲み水に適した安全な水を十分に確保できる水源が遠くにある集落は、近くの非衛生な水を飲食用に使用しているところもあり、衛生的にも懸念されます。
他方でマウベシの人びとは、主な収入源であるコーヒーを栽培する傍らで、小規模の作物栽培や畜産を営んでいます。しかし、山間部で畑の面積が少ない上に、乾期には水不足のため野菜の栽培などの農業生産活動はほぼ不可能となるため、年間の豆、野菜などの販売による収入は少なく、雨の少ない年は自家消費用のトウモロコシさえも不足し、人びとの食糧でさえ不足してしまいます。
パルシックは、マウベシ郡内の13の集落で、水利改善事業を実施しています。各集落の水事業開発計画を策定し、水供給システムの整備を行い、水源が居住地より下にある集落では、ソーラーパネルを動力としたポンプを設置して水を確保します。また、農業用地へは、ため池灌漑を造成して灌漑水路を整えます。
この事業を通じて、マウベシの人びとがいつでも生活用水および農業用水を確保できる環境が整い、人びとの生活が改善されることを目指しました。
年間を通じて生活用水へのアクセスを可能にし、山間部農村の生活を改善する事業として2015年から開始し、2018年12月をもって終了いたしました。3年間で13集落に上水道供給と植樹、6集落に灌漑用ため池の造成を行い、約3,450人の水へのアクセスと生活環境の改善を行いました。
事業地マップ
水源の水量を調査するスタッフ
水源より下の集落へ水を供給する貯水槽をつくるための資材の運搬作業
コンクリートミキサーを担いで急斜面を上る
※この事業は日本NGO連携無償資金協力の支援によって実施しました。