「5か年計画ももうすぐ折り返し!コーヒー畑改善事業のご報告 [前編]」より続く・・。
それでは、コーヒーの木の若返り以外に行っている畑の改善活動をご紹介します!
東ティモールのコーヒー畑は、よく言えば自然体…、悪く言えば手入れがされていない…、一見すると畑かどうか分からないこともあります。さらに、多くの場合コーヒー畑は急な斜面にあり、雨が降ると土砂とともに土壌に含まれる養分が下の方に流れ出ていってしまいます。
そこで、コーヒーの畑を等高線状に段々畑に整え、土壌に含まれる養分を木の周りに留め、コーヒーの木が養分をたくさん吸収してたくさんのチェリーをつけるようにします。
東ティモールのコーヒー畑には積極的に肥料が施されてこなかったため、土壌が痩せています。そこで、苗床の近くで生ごみや落ち葉、牛糞などを混ぜた有機堆肥(ゆうきたいひ)を作り、苗の育成や苗の植え替え時に土に混ぜ、土壌の改良に努めています。
*EM菌:Effective(有用) Microorganisms(微生物)。乳酸菌や酵母、光合成細菌など、昔から自然界に存在し食品加工にも使われてきた微生物群。土着菌を活性化させて、土壌を豊かにする効果があります。
コーヒーの木はそのまま放っておいてもチェリーがなりますが、きちんと手入れをするのとしないのでは、全然違います。きちんと木の周りに生えた雑草を取ることで、コーヒーの木に養分が吸収され、たくさんの実がなります。また、コーヒーの木が伸びすぎて、不要な枝に養分がとられないようにきちんと剪定することも重要です。
このように、木だけではなく畑全体を改善することが、コーヒーの収穫量を上げるために重要なことです。 これまで、2019年(1年目)に31世帯、2020年(2年目)に89世帯、合わせて120世帯の農家がコーヒー畑の改善に取り組みました。そして、3年目は新たに120世帯がコーヒー畑の改善に取り組む予定です。
1年目は予定していたよりも参加する農家が少なかったのですが、畑の改善に取り組む農家の様子や成果を目にしたり、パルシックのフィールドオフィサーが熱心に農家を訪問し、モニタリングや作業を手伝う様子を見て、参加を希望する農家が増えたことは非常に嬉しいことです。
参加農家が増えることは嬉しくありますが、課題もあります。 計画では、2年目に各集落で技術普及員を選出して、彼らが新たに改善に取り組む農家への指導を行う予定でしたが、技術普及員の育成は思うように進んでいません。
それにはいくつか理由があります。一つには自分の畑の改善に熱心に取り組む農家と、技術を他の人に伝えたいと思う農家は必ずしも一致しないことです。事業を担う現場のスタッフにも「まずは畑の改善を進めて成果を出すことを優先すべき」という考えがあり、作業優先で人材育成が後回しになりました。加えて、技術普及員の育成を担うコーヒー畑の専門家が新型コロナウイルスの影響により派遣できませんでした。
そのため、3年目は技術普及員を育成しながら、新たに参加する120世帯の畑の改善を同時に進める必要があります。
参加農家が一気に2倍に増えて心配な点はありますが、パルシックのコーヒー事業を16年に亘り支え、コカマウの農家からの信頼も厚い現地スタッフのネルソンが、「大丈夫!」と言えば、何とかなるような気がしてしまいます。
そして、みっしりと木の節々に実のなったコーヒーの木と農家さんの誇らしい顔を見たら、3年後が楽しみで仕方ありません。 これからも定期的に報告していきますので、どうぞ今後の活動を見守ってください!
(東京事務所 小栗清香)
※この事業はJICA草の根技術協力事業の業務委託を受けて実施しています。