2022年7月7日、オンラインイベント「スリランカ経済危機:そこに暮らす人びとの今」を開催しました。そこで皆さんにスリランカの現状を知っていただくとともに、緊急支援のためのご寄付を募りました。その後の緊急支援の進捗とスリランカ国内の状況について、ご報告します。
スリランカの現状を心配されている多くの方からご支援をいただき、スリランカへの寄付は目標額の60万円を超えることができました。ご支援くださった皆様、本当にありがとうございました。
現在、ジャフナ事務所の元スタッフのアジットさんが、経済危機の影響を受けて困窮するスリランカ北部ムライティブ県タンニムリップ村の家族に食料や生活用品など必要な物資を届ける準備を進めています。配付する物資のリストを作成し、数軒のお店から見積りをとっていますが、小麦粉などは在庫が減り価格がさらに上がっています。予算内で、困窮する人びとが本当に必要とする物資を配付できるよう、タンニムリップ村の人とも協議しながら進めています。
物資や燃油の調達などで問題が起きなければ、9月中には配付を終える予定です。配付完了後にまたご報告します。
7月7日の時点では、今後何が起こるのか予測するのは大変難しい状況で「ゴタバヤ・ラージャパクサ大統領(7月7日時点)が退任し大きく政治体制が変わらない限り状況は好転しないし、残念ながらゴタバヤ大統領がすぐに退任することはないのではないか」と、アジットさんはオンラインイベントで話していました。しかし、翌々日の7月9日からコロンボだけではなく地方からの市民がコロンボに集まって大規模なデモとなり、その結果7月15日にゴタバヤ大統領が退任となりました。その後、国会議員による大統領選出投票が行われ、同月21日にUNPのリーダーで首相兼大統領代行を務めていたラニル・ウィクラマシンハ氏が大統領に就任しました。
ラニル大統領は経済政策についての経験が豊富であり、また欧米諸国ともうまく関係を築いてきた政治家です。ラニル氏が大統領就任前から進めていたIMF(国際通貨基金)との交渉では、9月1日に最終合意ではないものの、4年間のプログラムで29億ドルの金融支援を受けることに決まりました[1]。今後、スリランカはIMFからの融資を受け経済の立て直し目指して、二国間の債務の交渉、国内税制の改革、歳入の拡大など、難しい課題に取り組むことになります。また、米国は主に稲作に必要な化学肥料や農業資材のための大規模な農業支援を行うと発表しています[2]。ただし、今後の政治的な安定が続くかは見通せない状況です。
さらに、大統領は変わりましたが、大統領含め新しい内閣のメンバーなどはこれまでと同じ顔ぶれで、政治体制が刷新されたとは言い難い状況です。
人びとの生活については、前述のとおり、物価高は相変わらずで生活が苦しい状況が続いています。国連は、8月5日時点でスリランカでは570万人が人道支援を必要としており、人口の22%にあたる490万人は食料を安定的に得られない状況に陥っていると発表しています[3]。停電もひきつづき度々起きています。一方、ガソリンなどの燃料に関しては販売管理が改善され、真夜中までガソリンスタンドに並んで結局購入できなかったということはなくなってきたようです。
今後ともスリランカの動きを追っていきます。
[1] https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/09/14a05216a8b592c7.html
[2] https://www.dailymirror.lk/latest_news/USAID-to-provide-US-20-Mn-as-humanitarian-aid/342-244671
[3] https://reliefweb.int/report/sri-lanka/sri-lanka-multi-dimensional-crisis-situation-report-no-2-5-august-2022
(スリランカ事業担当 西森光子 高橋知里)