ガザ地区では、戦争によって多くの農家や漁師が農機具や農地、船などを破壊された一方で、水や電気の供給が制限され、物資の搬入も検問で厳しく制限されています。そのため、復興に必要な資材のうち約1%しかガザ地区に届いていない状況です。他方、ガザ地区の食糧生産量は約33%も落ち込み、食料品の値段が高騰したことも相まって、市民の食糧配給依存率は戦前の66%から72%まで上昇しました。しかし、国連や自治政府が配布している配給食糧は缶詰めや小麦などが多く、栄養が偏りがちとなっています。
パルシックは2014年度より、少しずつ閉鎖されたガザ地区が自給する力をつけていくことを目指し、ガザ地区中部の国境沿いの地域で以下の事業を実施しました。
パルシックでは被災した小規模農家に対して農機具や堆肥、苗を配布して食糧生産量を上げ、さらに生産された新鮮な農産物を買い取って貧困世帯に配布することで、食糧不足や栄養の偏りを改善できるようにします。特に、夫や稼ぎ頭を戦争で失い、収入の確保が難しい母子家庭には鶏やウサギ、鳩などを配布して飼育してもらい、自家消費に充てると共に、余剰生産分を販売できるようにして収入向上を目指します。 この事業は1970年台にパレスチナの農業開発を目的として農業専門家、農民によって組織された Palestinian Agriculture Relief Committee (PARC=パレスチナ農業復興委員会)を協力団体として実施しています。PARCは灌漑や土壌改善の技術指導を行い、農産物の市場確保のためにオリーブやオリーブオイルなどのフェアトレードを行っています。空爆が開始されてからは、西岸地域で購入した食糧をガザに輸送、避難民に食料配布を実施してきました。
2009-2010年のイスラエルの攻撃において家族を亡くし、爆撃音や暗闇等を経験したことで、ガザに住む子どもたち108万人のうち約40%は心に傷を負っていると言われています。パルシックでは、こうした子どもたち300名を対象として、専門の心理士による演劇ワークショップやアートセラピーワークショップ、屋外活動や専門的なカウンセリングを通じて、心のケアを行い、ストレスやトラウマ的な症状の緩和に努めています。
この事業は1997年よりガザで身体障がいを持つ児童のサポートを行っているDeir El Balah Rehabilitation Society (DBRS=デル・アルバラリハビリテーション協会)の協力を得て、同団体のデル・アルバラ地域のリハビリテーションセンターを使用し、さらに同じく中部に拠点を置くMaghazi Community Rehabilitation Society(MCRS=マガジ・コミュニティー・リハビリテーション協会)のセンターも利用して実施しました。
※この事業はジャパン・プラットフォームの助成および皆さまからのご支援によって実施しました。