PARCIC

スタディーツアー

東ティモール コーヒー生産者を訪ねる旅 2012 参加報告集

ツアー概要

日程 : 2012年8月4日~12日 10日間
訪問地: 東ティモール ディリ、マウベシ、レブルリ集落
参加者: 11名
報告集: 東ティモールコーヒーツアー 2012 報告集(PDF:約2MB)

はじめに

2012年は東ティモール独立10周年にあたり、日本国内でも関連のイベントやメディアへの露出で注目を集めていました。パルシックにとっても、コーヒー生産者の支援を始めてから10年という節目の年に当たります。そんな中で今年は総勢11名の方々にご参加いただき、8月4日~8月12日、10日間のツアーを催行しました。

今回のツアーでは、新しく組合(コカマウ)に加入したばかりのレブルリ集落を訪れました。首都ディリから車で4時間ほどかけマウベシ郡の中心部へ行き、更に2時間ほど山の中を進んだところにある集落で、組合員数は約24世帯です。ディリを離れるにつれ道は、どんどん険しくなっていき(一部スリリングな箇所もありましたが)、山々に雲がかかる景色、伝統家屋、時々すれ違う馬に乗った農民など、ティモールの美しい風景に出合いました。この道は「カフェ・ティモール」が日本へ来る道(まさに生産者の方々が収穫した豆をトラックや馬に積んで、あるいは担いで通っている道)です。

レブルリ集落では農民たちは今回のツアーのために色々と準備をしてくれていました。中でも新しくトイレ用の小屋まで作ってくれたのには驚き、感謝でした。滞在中も、すれ違うたびに「寒いですね」「元気?」など声をかけてくれたり、あるいは笑顔を向けてくれました。

滞在中の食事は、野菜をいためたものとお米(左記がこのような集落では通常食)に加え、豚を1頭絞めてくれたとの事で、豚肉料理もたくさん出ました。貧しいからかもしれませんが、食材を余すところなく使う料理に、食品廃棄物が多すぎる日本に住むものとして、学ぶべきところがあると思いました。

遠い国から訪問者が来ていることは、集落を超えて近隣の村々にも届いているようで「2時間かけて歩いてきた」という若者にも出会いました。

集落に滞在した2日間は、参加者の皆さんも食事支度の手伝いをしたり、現地の歌を地元の方と一緒に歌ったり、子供たちに折り紙を教えたり、サッカーボールやバレーボールで走り回ったり、言葉が中々通じなくとも様々な交流をされていて、笑い声の絶えない集落滞在になりました。

コーヒーの収穫作業では、シェードツリー(日陰樹)の下に生えたコーヒーの木々から、赤い実だけを一粒ずつ選び、摘み取ります。作業中は、農民の方々が見本を見せてくれますが、木を撓らせて高いところにある実を摘んだり、急な斜面の中、大人も子供も軽い身のこなしで働いていて、感心しっぱなしです。空気がきれいで、木々の間から太陽の陽が漏れるこの場所で、美味しいコーヒーが育っているのだ、と身をもって感じました。

その後摘んだ実は集められ、熟している実を注意深く選別し、水洗→脱肉→水洗→発酵→水洗→乾燥と1次加工を終えます。せっかく苦労して摘んだ実が、工程ごとに、何度も選別され、どんどん減っていくのは農民の方にとって大変難しく、辛い作業だと思いました。ただ厳しく選別しないと、品質が落ち、のちにコーヒーの雑味になります。そのため農家さんは、炎天下で真剣に手選別をしていました。ちなみにここで弾かれた豆は、無駄にされず、生産者の家族の消費用になるそうです。またチェリー(完熟豆)の脱穀で出た外皮や果肉は、堆肥となり、コーヒー畑へ戻されて、循環しています。

最後に集落から首都ディリへ運ばれ、2次加工場で、脱穀とサイズ分けをされ、さらに手作業で、サイズ・品質の選別を受けます。これらは近隣に住む女性達がたくさん集まって作業をしていました。こうしてやっと日本へ向けて出荷、と一連の流れを見学しました。

滞在中には、農民や現地のNGO (LA’O HAMUTUK)のスタッフに、独立前の事、その後の経済的・政治的問題や発展についてお話をお聞きしました。ティモールには限りある資源(石油)への経済依存、インドネシアなどからの輸入超過など数多の問題があります。それをどう乗り越えていくのかと考えると、そこにはコーヒーを含めた農業の発展がかかせない事を学びました。東ティモールが抱える問題は、日本人にとってもただ押し付けるだけの問題ではない事が、歴史の側面からもわかります。一方で、子供たちが裸足でもたくましく生きている様をみて、私は強く希望を感じました。同時に本当の豊かさとは何だろう、物質的な豊さと引き換えに日本に住む私たちが失いつつあるものは何だろう、とも考えさせられました。

最後になりますがツアーにご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。同行スタッフとして至らない点も多々あったかと思いますが、色々な意見やご協力をいただいたお陰で、とても実りの多い「人と人が出会う」旅になりました。この場をかりて、心よりお礼申し上げます。

何より、これからも一杯のコーヒーの背景にあるストーリーを、多くの人びとと共有できることを願っています。

(東京事務局 ロバーツ圭子)

レブルリの山を歩くツアー参加者たち

マウベシの山を歩くツアー参加者たち

 

コーヒーの量り売り

コーヒーの量り売り