東ティモールに来て2か月が経ちました。着いて10日目にデング熱にかかって入院したこと以外は、まずまず順調です。こちらに来て1か月間はテトゥン語を習うために語学学校に通ったり、病室の天井を眺めて過ごしていましたが、今は水利事業を行っているマウベシに滞在しています。
マウベシは海抜1,400~1,700mの高所にあります。そのため市場で売っているスナック菓子の袋が富士山の売店のもののようにパンパンに膨らんでいます。日中の日差しは強いですが、朝と晩はかなり冷え込みます。まだ6月ですが、私はセーターとウールの靴下を身に着けて、夜は毛布にくるまって寝ています。持ってきた防寒具はこれで最大限なため、もっとも寒くなるという8月はどうなることかと、今からおびえています。しかしこれだけ寒くても、蚊がたくさん飛んでいるのは意外でした。
水利事業の作業現場は山の中なので毎日が山登りです。山道を登ったり下りたりしていると、標高が高いためかすぐに息が切れ、頭がふらふらします。村の人と一緒に歩きますが、彼らは信じられないくらいの速さで歩きます。雨が降って地面がぬかるんでいてもまったく関係ありません。煙草を吸いながら鼻歌まじりにスタスタ歩いていきます。しかも私はしっかりとした長靴を履いていて、彼らはビーチサンダルか裸足です。それでよくよく観察してみると、ティモール人は小柄な人が多いのですが、足は日本人に比べると大きい気がします。その足で地面をつかむようにして歩くのでしょう。息を切らして必死でついていくと、その横を子どもたちが(もちろん裸足で)笑いながら走って私を追い抜いていきます。
マウベシの子どもは、首都のディリに比べると人懐こいです。道を歩いていると「ボンディア!(おはよう)」「ボタルディ!(こんにちは)」と大きな声で挨拶をされます。私も挨拶を返すと、なぜか恥ずかしそうにしています。
子どもたちといえば、休みの日になると事務所の前のテラスが広くてちょうどいいからか、男の子たちがサッカーを始めます。これがものすごくうるさいのです。ほとんど金切り声をあげてボールを蹴っています。あまりにうるさいので注意をしようと出ていくと、「コレガ!コレガ!(友達)」と笑顔で握手を求めてきました。それでこちらもつられて「コ、コレガ・・・」となってしまって、けっきょく彼らが疲れ果てて帰るまで待っていました。
私は都会育ちなので、静かな田舎の生活に憧れを抱いていました。ところがこちらに来て判明したのは、田舎の生活はぜんぜん静かではないことです。
まず朝はまだ日が昇らないうちから、気の早いどこかの鶏が「コケコッコオォォォ!」と鳴き始めます。それにつられるようにほかの鶏も遠く近くで鳴き始めます。また民家では馬や牛、ヤギ、豚などを飼っていて、それら動物たちの鳴き声も聞こえます。犬もその辺をうろうろしていて、朝から晩まで吠えています。夜になるとカエルが草むらから「グエエ、グエエ」、部屋の中ではヤモリが「チチチッ」、道を歩いていると子どもたちが挨拶を・・・、とあげたらきりがないですが、とにかく田舎はちっとも静かではありませんでした。ただどういうわけか、マウベシでは夜はぐっすり眠れ、朝はすっきり起きられるのが不思議です。
(マウベシ事務所 大島大)