ボンディア(おはようございます)!東ティモール事務所の大坂です。
このたび日本へ一時帰国をして東ティモールへふたたび戻って参りました。一年ぶりの日本。家族に再会できたのはとても嬉しかったのですが、久しぶりの日本、何か違和感…。テレビをつければコマーシャルの嵐、消費を促す大量の新聞広告。日本で暮らしていた頃は感じなかったのですが、怒涛の消費促進のうねりにすっかり酔ってしまいました。東ティモールの空港へ着くと、いつもと変わらない、のんびりムードに迎えられホッとしている自分がいました。この2年半で日本が変化したのか、私がこちらに順応したのか…暫し悩んでいるところです。
とはいえ、ここ東ティモールも実は他人ごとではないのです。首都ディリにできた、東ティモール初の複合施設【ティモール・プラザ】。オープン当初の2011年11月はテナント数も少なく、まだ人もまばら、私たちの同僚にも「あんな大きな建物に入るの、何だか怖くてまだ行ったことない」と言われる始末。しかし1年半を過ぎた今、フードコートのランチタイムは連日の大賑わい、しかもお客さんの半分以上はティモール人。一般のレストランとは違うお手頃なフードコートとはいえ、1食のお値段は飲み物を含めおよそ4~5米ドル(4~500円)。決して安くはないのです。インドネシア式の【ワルン】といわれる大衆食堂は大盛りご飯に野菜、魚または肉を選べるスタイルで、およそ1.25~1.50米ドル(125~150円)、こちらは庶民の味方で昼、夜ともに大人気ですが、それでも、ディリで仕事を持つティモール人は自宅に戻り、昼食をとるのが一般的です。
また外国人向けスーパーマーケットで東ティモール人が買い物をするなんて、10年前はなかったといいます。しかし昨年末に国連関係職員が多く去った今、現在はお客さんの8割が地元の人でしょうか。買うものを観察していると、人気なのが輸入リンゴやオレンジ、お菓子やシャンプー、リンス、冷凍輸入肉など。市場でも屠畜(とちく)した牛肉など販売されているのですが、輸入肉が人気なのは、冷凍されていて保存に便利、衛生面で安心、輸入肉のほうが国産肉より場合によって安い(可能性がある)、などが理由でしょうか。
私が赴任した2年半前に比べ、確かに何かが変わってきていると感じます。ティモール人が運転する高級4WD車、増え続けるバイクと車の数、きれいになっていく若い女の子たち、建物のスクラップ&ビルド。
そして先日、悲しいできごとがありました。小学生くらいの男の子が私に向かって卑猥な言葉をかけてきたのです。彼らにしてみれば私などは彼らの母親の年齢と同じ世代またはそれ以上でしょう。こちらでは目上に対して敬う、とても美しい文化が強く残っています。だから私は東ティモールが大好きなのですが、子供たちのその振る舞いに愕然としました。何かが失われつつあるかも知れない、それも大切なものが。そのしわ寄せは必ずはじめに弱い者にいきます。それは子供たちです。一瞬【叩いてやろうか!】と心よぎりましたが、あの子供たちが悪いのではありません、その何かがそう言わせているのだと思います。
目に見えて格差が広がりつつある東ティモール。このままいけば、帰国した際に再び出会えてホッとした東ティモール人の人懐こい笑顔も、困ったときはお互いさまの精神も、目上の人を敬う心も霞がかってしまうのでしょうか?経済発展と引き換えに…。
やっぱりあの時、子供たちに(暴力ではなく!)言葉で諭せばよかった、それは大人である私の責任であった、と後悔しています。
(東ティモール事務所 大坂智美)