3回目は南国のフルーツ、パパイヤです。パパイヤといえば果物ですが、東ティモールでは葉、花、実、そのすべてを野菜としても食します。
パパイヤの花
甘い果実からは想像もつきませんが、パパイヤの葉は猛烈に苦く、マラリア予防に効くと深く信じられています。「ちょっと疲れ気味で体調崩しそうだなー…」という時に若い葉をインスタントラーメンと一緒に煮たり、パパイヤの葉だけを炒めたりして食べると元気がでてくる気がします。苦味は強いですが、あっさりとしていて後に残りません。
パパイヤの花は空芯菜と一緒に炒めるのが一般的です。市場では気を利かせて適量の空芯菜の葉とパパイヤの花を一緒にして売っていたりもします。小さくて黄色い花は食卓に彩を添えてくれますが、若いつぼみはやはりパパイヤのイメージを覆す苦味があります。
そして驚くのがパパイヤの実です。東ティモールで広く使われているテトゥン語は語彙が少ないといわれています。例えば『マリリン(malirin)』という一語は『寒い』『涼しい』『冷たい』のすべてに使われるので、わたしの子どもたちは、水浴びの水を「さむーい」と言って「“つめたい” でしょ!」と訂正され、「にほんはつめたいからすきー(注:冬にしか行ったことがないので)」と言って「その場合は、“さむい”!」と突っ込まれても、なかなか覚えられません。話は脱線しましたが、そのテトゥン語にこれほどの語彙があったのか、と気づかせてくれたのがパパイヤの実でした。
パパイヤの若い実「アイディラ・オキール」
「アイディラ・マンガール」をトラシと一緒に炒めてみました。かなり甘くてツヤまで出ています。
青い未熟な実は「アイディラ・オキール(Aidila okir)」。少し苦味があり皮をむくと乳白色の液が出てきます。花と同じように空芯菜と一緒に炒めたり、ニンニクと塩、インドネシアのエビペースト「トラシ(trasi)」と炒めて食べたりします。しっかりとした歯ごたえ、味付けをしっかりと吸収した果肉はもはやパパイヤではありません。ポルトガル時代を知っている少し育ちの良い人たちは、湯がいて食べるのが一番おいしい、といいます。一度試してみましたが、ぼんやりとした味でわたしはあまり食べつけませんでした。 ちょっと甘みの出てきた半熟の実は「アイディラ・マンガール(Aidila mangal)」。やはり炒め野菜にして食べますが、オキールほどには人気がないようです。果物として食べるには若く、火を通すと甘みが増します。
そして黄色やオレンジ色に鮮やかに熟した実は「アイディラ・タサック(Aidila tasak)」。お馴染みの果物パパイヤです。我が家の庭には雨後の竹の子のように年中パパイヤが芽を出します。熟した実は食べきれないほどで、なるほど、葉や花、若い実を野菜にすればこの恩恵を余すところなく受けることが出来るのだと納得しています。必要なところに語彙は発達するのですね。
(東ティモール事務所 伊藤淳子)