PARCIC

森林保全型農業事業

現金収入源としての「養豚」を目指して

東ティモールは赤道南下にあるため、日本とは季節が真逆で、現在は寒い冬の時期(乾季)にあたります。朝晩に吹く風が肌寒いので、市場の古着売り場で暖かい上着探しをすることが、現地スタッフとの楽しみの一つとなっています。

現在、活動地マウベシでは、主要換金作物であるコーヒーの収穫時期を迎えています。赤く熟したコーヒーの実(コーヒーチェリー)や、摘み取った実の皮を取り除いたパーチメントを乾燥させている光景は、寒暖の差が激しい山間部のコーヒー産地特有の画になる風景です。

コーヒー以外からの現金収入源確保を目指し、その一つの方法として「畜産による現金収入」に取り組んでいます。今回は、養豚にスポットを当てて、昨年の活動の成果を紹介したいと思います。

1. エサの火入れをして消化を良くし、豚の肉付きを良くする

やはり畜産を実現する為にまず解決しなければならないのが、エサの確保です。山間部では人間の食料生産も厳しい中、人間と食べるものが競合する豚にどうやって餌を与えていくかは大きな課題です。雨季はトウモロコシなどを植えていますが、乾期は雨が降らないため、天水に依存している当地では限られた作物しか栽培することが出来ません。そのため、十分な量のエサを確保できず、ほとんどの世帯で0~2頭しか飼育されていません。この豚も、冠婚葬祭への貢物として懐から出て行ってしまうため、現金は手元に入りません。

そこで限られた食糧を有効に使って、豚の生育向上を目指すべく、給餌改善トレーニングを実施し、以下の2つの方法を提示しました。

  1. エサに火を加えて消化を良くし、豚の肉付きを良くする。
  2. 食べ物を小さく切り、火が通りやすく、また子豚でも食べやすくする

従来は、畑から掘ってきた芋などを生のまま与えることがあり、豚が食べても消化に時間がかかり、肉がついて体が大きくなるのにも時間を要しました。消化しやすくしたことで、これまでよりも短い期間で豚の体を大きくすることが出来るようになりました。また、子豚は消化器官が十分に発達していないため、食べても口から出してしまうなどとても食べにくそうでしたが、エサを小さく切り、食べやすくすることで、子豚もしっかりエサをとることが出来るようになりました。

火入れの際には、薪の使用量を削減する為に配布したロケットストーブを利用している世帯が多く、参加者からも好評を得ています。

ロケットストーブを使って、火入れしている所

ロケットストーブを使って、火入れしている所

火入れしたエサを食べる豚

火入れしたエサを食べる豚

2. 畑の肥料分として鶏糞を調達・配布し、トウモロコシやイモ類の生産量を高める

東ティモール国内の養鶏場から鶏糞を調達、配布(40㎏×2袋/世帯)し、農地の肥沃度向上を図りました。養豚のエサとなる作物の収量改善として鶏糞を利用することで、トウモロコシやイモ類の生産量を高めることを目的としています。

鶏糞の配布

鶏糞の配布

各集落へ鶏糞配布後、トウモロコシの収穫時期(雨季2~3月頃)に合わせて、収量調査を行いました。

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(左)鶏糞未散布畑のトウモロコシ / (右)鶏糞散布畑のトウモロコシ

調査の結果、鶏糞を散布した畑では、トウモロコシで1反(10a)当たりこれまでの約2倍の収量増加を実現することが出来ました。
サンプルとして収穫したトウモロコシの乾燥重量(1本あたり。子実のみ)を比較してみると、鶏糞未散布は47gであったのに対し、鶏糞散布区は92gでした。

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左:鶏糞散布区域のトウモロコシサンプル / 右:鶏糞未散布区域のトウモロコシサンプル

トウモロコシの粒の色が混じっているのは、もともと当地で栽培されて、自家採取をしていたためです。色の揃ったトウモロコシは、東ティモール中央政府を通じて、Seeds of Life(東ティモール農業省とオーストラリア政府の共同事業。URL : http://seedsoflifetimor.org/)の推奨する高収量品種の種が地域内で試験的に栽培されているためです。

今回の鶏糞配布は、一時的なものであり、根本的にエサ問題を解決できてはいません。今後は、既に設置したバイオガスプラントの副産物として発生する液肥や、馬糞などの未利用有機資源の有効活用を行う計画です。
(東ティモール事務所 宮田悠史)