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森林保全型農業事業

農業チームの現場から ~森林保全型農業の支援事業 進行状況~

2013年9月1日より、森林保全型農業の支援事業の2年目が始まりました。

現在東ティモールは雨季に入り、 活動地マウベシでは毎日のように雨が降り続いています。これまであまり活動内容に触れることができなかったので、マウベシでの活動についてまとめてご紹介したいと思います。

1.養蜂

養蜂1年目は、東ティモールに生息する「オオミツバチ」と「アジアミツバチ」の2種類のミツバチについて、日本の養蜂家の方を招いて生態調査やハチミツの元となる蜜源植物の調査を行いました。また木材を使った巣箱(重箱式巣箱)を作成し、集落内で養蜂を行うのに適すると思われる場所に設置しました。 2年目はさらなる生態調査として、分蜂(巣別れ)の時期を特定して出来るだけ多くの蜂群を手に入れ、巣箱を設置することを目標として活動しています。

分蜂とは、新しい女王蜂が生まれる直前に、元の女王バチが働きバチを半分連れて新しい住処へ移る行動のことです。雨季に入り、餌となる花や作物が芽吹きだし、ミツバチの活動も活発になってきています。餌が十分にあると、ミツバチは分蜂の準備を始めるので、私たちも分蜂群を手に入れるべく、新しい住処となりうる巣箱の設置を進めています。

10月には再度日本の養蜂家を招いて、生態調査と丸太を使った分蜂群捕獲用待ち箱(ブンコ)の作成・設置を行いました。訪問したエルメラ県サココ集落では、ブンコ1基と重箱式巣箱1基を設置し、ミツバチの分蜂群の入居を待っています。 マウベシでは、自然巣を住民に探してもらい、発見後、土地の持ち主と交渉したうえで巣箱の設置を行っています。これまでにポサダマウベシ(宿泊施設)に3個、ハトゥカデ集落で7個、ルスラウ集落で3個の巣箱を設置しました。

ルスラウ集落にて。近くに自然巣があり、ブンコと重箱式巣箱を1基 ずつ設置。

ポサダマウベシの一角に設置した巣箱

 

ルスラウ集落にて。近くに自然巣があり、ブンコと重箱式巣箱を1基 ずつ設置。

ルスラウ集落にて。近くに自然巣があり、ブンコと重箱式巣箱を1基ずつ設置

2.養豚

養豚1年目は、放し飼いではなく、つがいでの飼育により、子豚を肥育・販売して現金収入を得ることに重点を置いた近代的養豚の紹介と、これに適した豚舎の建設を対象集落で実施しました。 2年目は、新しい豚舎での飼育方法、給餌方法、病気対策や販売に関する情報提供についてのワークショップを4集落で実施しました。

近代的畜産経営について、参加者に説明する東ティモール人スタッフの Adelino

近代的畜産経営について、参加者に説明する東ティモール人スタッフのAdelino

特に餌に関しては、山間部では人間の食料生産も厳しい中、人間と食べるものが競合する豚にどうやって餌を与えていくかは大きな課題です。そこで私たちは、

  1. 餌の火入れをして消化を良くし、豚の肉付きを良くする
  2. 畑の肥料分として鶏糞を調達・配布し、これの利用によりトウモロコシやイモ類の生産量を高める

方法を提示し、説明しました。

給餌改善トレーニングの風景。食べ物は小さく切って、火が通りやす くする。右は東ティモール人スタッフのCrispin

給餌改善トレーニングの風景。食べ物は小さく切って、火が通りやすくする。右は東ティモール人スタッフのCrispin

また、自己資金によるマイクロクレジットを導入し、対象者へ子豚2頭(オス1頭、メス1頭)の購入資金として$120の貸与を実施しています。1年後に出産、さらにその半年後に子豚を販売することを計画し、年10%の利息を付けて$138の返還で契約を交わしました。仮に病気等で購入した豚が死んでしまった場合、借入金$120のみの返還を契約書に記載しています。

マイクロクレジットの契約風景

マイクロクレジットの契約風景

3.バイオガス

1年目は、植林と、薪使用量削減を目指したロケットストーブの導入および薪小屋建設を行いました。2年目は、薪を使わずに調理できる「バイオガス」の導入に向けて、各集落で試験的に1基設置を行い、その後住民へ技術を移転させていきたいと考えています。

家畜の糞尿を原料としたバイオガスは東ティモール国内でも実践されていますが、継続して使用できている例がかなり少ないといわれています。原料となる糞尿の収集・投入が、これまでの薪拾いと比べて労力が軽減されれば浸透も早まるはずです。落ち枝を拾ったり、木を切ったりすれば薪は容易に手に入りますが、マウベシの集落では牛を飼っている人が少なく、豚も2頭前後で放し飼いにしている世帯が多いことから、バイオガスの原料収集には相当な労力が必要になると考えられます。

これまでの生活からガラッと変わったシステムを導入しようとするわけですから、様々な困難があるのは理解してもらわなければなりません。どのように住民に伝え、そしてどのようにバイオガスを継続利用できるようにしていくか、今後計画している住民対象のバイオガスワークショップのやり方も含めて模索していきたいと思います。2年目の活動と並行して、1年目の活動がきちんと現地に定着するようモニタリングも行いながら、参加住民と意見交換を進めています。

ハトゥカデ集落にて。原料を入れる発酵槽設置のための穴掘り

ハトゥカデ集落にて。原料を入れる発酵槽設置のための穴掘り

 

牛糞を水と混ぜて、発酵槽へ投入。この後、子供たちも手伝ってくれました

牛糞を水と混ぜて、発酵槽へ投入。この後、子供たちも手伝ってくれました

 

原料投入後のバイオガスプラント。順調に発酵が進めば約1か月 後にガスが発生する予定

原料投入後のバイオガスプラント。順調に発酵が進めば約1か月後にガスが発生する予定

一つ一つの活動がマウベシの人々の生計向上に繋がっていくよう、今後も事業を続けていきたいと思います。
(東ティモール事務所 宮田悠史)