PARCIC

森林保全型農業事業

天災?それとも人災?

ボンディア(おはようございます)!もう乾季に入ってもよい頃ですが、今年は天候が不順で7月に入った今もまだ雨が続いています。南海岸に接しているスアイ県、東部のビケケ県とラウテム県で大規模な洪水が発生、死亡者がでて家畜や家が流され、水田も泥に浸かってしまい、すべてを失ってしまった人々が多数出ています。スアイ県では政府の緊急救援も丸3日間こなかった、と泣きながら怒りを露わにする住民のインタビューがテレビのニュースで放映されていました。活動地マウベシでも雨が続いており、組合メンバーのコーヒー加工にも影響が出ています。

どうしてこんなに甚大な被害が出たのでしょうか?まず、はじめて東ティモールに来た際、飛行機のなかから見るティモール島に驚く方が多いと聞きます。実際私もそうでした。何故なら山肌が丸見えで赤茶の土壌が露わになっているからです。インドネシア時代にインドネシア軍が独立派ゲリラの掃討作戦で空爆し、山を焼いたそうですが、現在はおもに調理用の薪のための大量の樹木伐採が要因であるといわれています。他には焼畑農業で延焼、住民が邪魔な木を勝手に伐採、など理由はさまざまです。農業省にも森林局があり植林を促進しており、また環境省も声高に政策提言をすすめておりますが、残念ながら目に見えた結果は出ていません。私どもも含めたNGOやその他団体もワークショップやイベントを各種開催していますが、そもそも時間のかかることなのかも知れません。

集中豪雨が発生した場合、すぐに地すべり、山崩れが発生。しかも山崩れで道が塞がれる箇所は毎年決まって同じです。すると交通手段を絶たれ物資の運搬ができずに陸の孤島となり、米など食料が底をついてしまいます。また急速な開発を推し進める東ティモール政府の公共工事の質を問題視する声もあり、大規模な予算をつぎ込んで道路や川や橋の修繕工事をしても、しばらくすれば水に流される、といった悪循環も起きています。

赤土が流出

赤土が流出、運転怖かった!

冒頭にお話したこれら洪水の被害も天災・人災の両面だと人々はみているようです。スアイ県の被害は、政府要人が以前視察に来た際に、水害が心配なのでどうかここは早急に対応して欲しい、と伝えたが結局何もしてくれずにこうなった、と伝えていました。また工事が入っても業者のピンハネが横行しており質のよい材料は使っていない、または計画より少ない材料で仕上げてしまう、といわれています。公共事業の監査も行き届いていない様子。

工事の質は一体?

工事の質は一体?

このような状況のなか、しわ寄せや被害にあうのは結局のところ住民です。しかし、その一方で、住民は生活に大量の薪を使用しています。

よく乾燥した薪を使って煮炊きしたり、お鍋の底についた‘すす’をとるだけで、燃焼率は大幅にアップし、薪使用量をずいぶん削減することができます。しかし現状は、子どもや女性が1週間に2~3度薪を集めに行き、薪が濡れていても仕方なく使っています。すると煙が大量に発生し、調理をする女性たちの健康にも深刻な影響がでます。

人々の意識や習慣をかえることは時間のかかることです。しかしできることをいま行わなければ、2030年には200万人になるといわれている東ティモールには数えられるだけの木々しか残らなくなってしまうでしょう。私たちが現在、推し進めている循環型農業プロジェクトは一刻を争う、しかし長い時間を必要とする、これら問題を解決するためのツールのひとつといえると考えています。

(東ティモール事務所 大坂智美)