プロジェクト対象のマウベシ郡4集落(クロロ、ハヒタリ、ルスラウ、ハトゥカデ)で、苗木の配布を行いました。
ピックアップ用の車に苗木を載せ、苗木配布の集合場所まで運びます。運んだら、早めに来ている参加者の皆さんと一緒に苗木を降ろします。初めは種類ごとに降ろして並べていたのですが、9種類52株の苗木を一人ひとり持っていく形式ではうまく行かず、2回目からは世帯分の塊を先に作り、それから配布するようにしました。
苗木を受け取る参加者は、遠くから馬に乗ってくる人もおり、苗木を持って帰る際には麻袋を利用していました。
一回では苗木を全て積みきることが出来ず、何回かに分けて苗木を運搬しなければならなかったため、次の苗木が現場に到着するまでの時間を使って、苗木の植え方と注意点などを説明しました。
今回配布した苗木には大きく分けて2種類あります。一つは、コーヒーのシェードツリー(日陰樹)の役割を果たし、薪として日々の煮炊きなどに使う木材系の苗木で、もう一つは、果樹など現金収入源となる苗木です。
異なる種類の苗木を植えてもらうことで、コーヒー以外からも現金収入を得ることができ、生計向上のための一つの手段になると考えています。果樹は植えてすぐに実はなりませんが、実がなればその後何年間か収穫することができ、また土壌流亡を防ぐ役割も果たします。
それぞれの地区ごとに、人々の性格も異なり、我先にと苗木を車から持って行ってしまう人や、リーダーを中心に協力しながら手伝ってくれる人などなど。ティモールといえども、色んな人がいるんだなと苗木配布の際に感じました。
苗木配布と同時に、マイクロクレジットを利用して豚の頭数を増やすかどうか希望調査も行いました。「バイオガス」という家畜の糞尿を利用してメタンガスを取りだし、それをガスとして利用するプロジェクトを並行して行っているのですが、原料となる糞尿は豚ならば最低4頭分必要なのです。しかし、ほとんどの世帯で豚を2頭しか飼っていないという現状があり、これを解消するために考えたものです。豚はいないけどバイオガスには興味を持っている人が多数おり、PARCICとしても悩みの種でありました。マイクロクレジットを導入するにしても、実際には様々な問題点があり、豚を増やせばそれだけ餌も必要になるけれどそれをどうするかとか、そもそも豚を管理・飼育することがまず大変だとか(東ティモールの人たちは、財産の一つとして考えている)…これらの課題解決に向けて、現在も活動を行っています。
バイオガスについては、また別の機会に詳しく書きたいと思いますが、中国やベトナムでは既に多数のバイオガスが稼働しているとのことです。インターネットで検索すれば、たくさん情報が出てきます。
集落の人々の関心は、「うちの所にもガスがきた!」という都会のような劇的な生活の変化に憧れている面もあるかもしれません。
電気は、全国に電気を普及させる国の政策により、トウモロコシ畑のど真ん中に電柱が建っていたりします。水は、水道があるのは稀で、週に1回水溜のポリバケツを車に積んで水場まで汲みに行ったりと、まだまだ整備も不十分です。そんな状況のなか、日々の煮炊きに使う薪の代わりにガスを使って料理するなんて、日本で考えてもびっくりするくらいの生活の変化です。
現地の人々の生活を変えるということは、良し悪しがあるかと思います。今回のプロジェクトを通じて、例えば子供たちが日々薪を拾いに行く時間を、他のことに好きなように使ってもらえるようになればと願っています。
(東ティモール事務所 宮田悠史)