PARCIC

東ティモール豪雨緊急支援

東ティモール豪雨 時間がかかったラクルバールでの資材配付

2021年4月に起こった豪雨災害。パルシックでは災害発生直後から被災状況の調査や支援物資の配布などを行ってきました。今回は、マナトゥト県ラクルバール郡での家屋修繕資材配布の様子をご報告します。

マナトゥト県ラクルバール郡はディリから車で約3時間の山間部にあり、2021年4月の豪雨では強風や洪水、土砂災害により多くの家屋が被災しました。

緊急支援対応を管轄している市民保護庁が実施する被災状況調査では、ラクルバール郡の家屋損壊世帯は6村で177世帯。しかし、ラクルバール郡長や各村の村長から、調査で漏れた世帯が多くあるとの報告を受け、各村の被災状況を再調査し、市民保護庁の被災者リストに入らなかった95世帯に対し、パルシックから家屋修繕資材を支援することになりました。市民保護庁と足並みを揃え、被災者が一斉に支援を受けられるようにしたいと調整を試みましたが、発災から半年が経っても開始の目処が立たなかったため、11月から2022年1月にかけて、一足先に95世帯への家屋修繕資材の配付を実施しました。

トタンや鉄筋をトラックから下ろしている

バタラ村で資材を受け取った被災者の方々

その後、マナトゥト県知事から市民保護庁への強い働きかけの結果、残りの177世帯もパルシックで支援をすることになりましたが、なんと、市民保護庁で保管されているはずの177世帯の被災者リストが紛失していることが明らかになりました。

その間、発災から半年以上経っても住む家がなく、親戚の家に身を寄せたり、中にはビニールシートで作ったテントで生活している家族もいました。本当に支援を届けたい人に届いていない状況にもどかしさを感じる一方、支援の偏りや不公平が生じることを危惧し、慎重に市民保護庁やラクルバール郡担当者との調整を図らざるを得ませんでした。

紛失したデータの再提出、再検証にさらに時間を要し、これら被災者に家屋修繕資材を届けることができたのは、災害から1年が経過した2022年4月に入ってからとなりました。

待ちに待った資材配付を開始する際には市民保護庁、ラクルバール郡長、各村長により、資材配付セレモニーが開かれました。郡の中心から遠い地域もある中、式には被災者の方々もたくさん集まってくれました。

セレモニーの様子。右端が市民保護庁総局長イスマイル・バ ボ氏

多くの被災者が集まって開催された

資材の配付は雨季と重なっていたため、道はぬかるみ、被災者の家の近くまでアクセスできないケースもありましたが、馬を使って運搬するなど、突然の雨にも対応しながら住民の皆さんと協力して進めていきました。

パルシックスタッフのフィリピオが被災者へ資材配付の説明をしている様子

ファトゥマケレク村で資材を受け取った被災者の方々

そして、災害発生から1年以上かかってしまいましたが、2022年6月末までになんとか被災者全員への資材配付を終えることができました。パルシックは1999年8月の住民投票直後の緊急救援から東ティモールでの活動を始めましたが、独立後に本格的な緊急支援を実施するのは今回が初めてでした。独立前の国連主導の緊急救援とは違い、東ティモール政府主導の緊急支援は調整に時間を要し、その割には上手く進まないことが多く、緊急性のなさに苛立つことが多々ありました。一方で、仮設住宅などを用意しなくても一時的に雨露をしのぐ場所がコミュニティの中にあること、村長や集落長といった地域のリーダーが住民のことを大変よく把握していることなど、多くの学びがありました。

例年であれば6月は乾季に入っているはずなのですが、今年はラクルバール郡をはじめ、山あいの地域では7月に入った今も雨が続いています。今後も気候変動の影響で予想していない災害が起きてしまうことが懸念されます。そのときに何ができるのか、この事業の経験を活かして考えていきたいと思います。

運搬を担ってくれたトラックのドライバーたち

(東ティモール事務所 伊藤淳子)

*この事業は、ジャパン・プラットフォームの助成と皆さまのご寄付で実施しています。

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