1月中旬から下旬にかけての6日間、ムライティブ県プドゥクディルプ郡の11の学校を回り、皆さまにいただいたご寄付で購入したノートを計3,000人の生徒さんたちに配りました。スリランカの新学期は1月から。まだ新しい年度が始まったばかりの学校では、1年生の歓迎会や、建て直した校舎のオープニング式、豊穣を祝う伝統行事の「タイポンガル」など、様々な式典が行われていました。ひとりひとりに確実にノートが届くよう、式典がおわるのを見計らい、生徒さんたちに集まってもらってノートを直接手渡しました。
11校の中でもアクセスが悪く、規模も小さいイルドゥマドゥ校とヴェナヴィル校では、両親が定職を持たない家庭が多く、収入が不安定で、子供たちは厳しい状況に置かれています。ヴェナヴィル校の3年生、マダンくんは、内戦で両親を亡くし、現在はおばあさんと一緒に暮らしていますが、彼の家庭も収入が十分ではなく、1年間に必要な文具をそろえることができない、とのこと。朝食を用意することもままならず、学校で提供される昼食に頼っている家庭も多く、特に貧しい家庭の子供たちに対しては、先生が自ら文具を支援することもあるそうです。文房具の用意ができないことを理由に子供を学校に送るのをやめてしまう親もいるので、ノートの支援はとても助かる、とイルドゥマドゥ校のマヒンドラ校長と、ヴェナヴィル校のセルヴァナヤガム校長先生は口を揃えました。
今回ノートを配布したプドゥクディルプ郡の学校はすべて、内戦の影響を直接受けており、どの学校も2008年末から09年初頭にかけ、地域での爆撃が激しくなるに伴って学校を閉鎖、地域の人々は皆、県外や県内の別の地域に避難していました。終戦後帰還して、2010年、11年に学校での授業が再開されました。現在は950人の生徒数を抱えるプドゥクディルプC.C.校も、再開当時は約50人の生徒数だったそうです。大きな建物が集まる学校は爆撃の対象ともなりやすく、校舎に砲弾の後が痛々しく残っているところも少なくありません。中でも、プドゥクディルプR.C.校は、授業再開後2年が経った今も、まだ主校舎の修復がなされておらず、崩れた壁と銃撃の後が残る天井の教室で生徒さんたちが勉強していました。
今回、1年生(5歳)から5年生(9歳)までに5冊、6年生(10歳)から11年生(14歳)までに10冊のノートをそれぞれ配布しました。これは1人の生徒さんの1年分の授業をカバーできる数です。進学校で生徒数が多く、地域の中でも比較的豊かな家庭の子供も集まるプドゥクディルプC.C.校を除いたすべての学校で、1年生から11年生の全生徒へ配りました。
また、1月末時点で、ご寄付をいただいた額がプドゥクディルプで配布を予定していた金額を上回ったため、パルシックが事業を行っているマリタイムパットゥ郡の、戦禍の影響を最も激しく受けた地域の2校にも、追加でノートを配布しました。
パルシックが募った寄付とは別途、約900本の鉛筆、ペンの寄贈もいただき、各校で1、2年生に鉛筆を、2校で6~8年生にペンを1本ずつ配布しました。
学校名 | 1-2年生 | 3-5年生 | 6-8年生 | 9-11年生 | 合計 | |
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1 | プドゥクディルプC.C. | — | — | 385 | — | 385 |
2 | プドゥクディルプR.C. | 107 | 119 | 115 | 106 | 447 |
3 | アナンダプラム | 34 | 41 | 54 | 49 | 178 |
4 | イラナパーラ | 70 | 69 | 95 | 81 | 315 |
5 | スダンティラプラム | 59 | 72 | 83 | 101 | 315 |
6 | コンパーヴィル | 93 | 113 | 94 | 30 | 330 |
7 | カイヴァリ | 78 | 112 | 105 | 31 | 326 |
8 | ヴェナヴィル | 49 | 54 | 53 | 18 | 174 |
9 | マントゥヴィル | 72 | 69 | 77 | 17 | 235 |
10 | イルドゥマドゥ | 19 | 46 | 36 | — | 101 |
11 | テラヴィル | 39 | 65 | 54 | 15 | 173 |
12 | ムリワイカイ・イースト | 34 | 45 | — | — | 79 |
13 | ムリワイカイ・ウェスト | 26 | 43 | 47 | 31 | 147 |
配布生徒数合計 | 680 | 848 | 1,198 | 479 | 3,205 | |
一人当たり配布ノート金額 | Rs.91 | Rs.99 | Rs.230 | Rs.300 | — | |
配布合計額 | Rs.61,880 | Rs.83,952 | Rs.275,540 | Rs.143,700 | Rs.565,072 |
1-2年生 | 一般科目用4冊、数学用1冊 |
3-5年生 | 一般科目用3冊、数学用1冊、英語用1冊 |
6-8年生 | 一般科目用9冊、数学用1冊 |
9-11年生 | 一般科目用9冊、数学用1冊 |
今回の学校支援の提案をパルシック事務所に持ってきてくれたプドゥクディルプ出身の大学生ジェガンさんは、「人々の帰還後、これだけの数の学校で、全校生徒にノートを配布したのは自分が知る限りパルシックが初めてだった。程度の差はあれ、多くの家庭の経済状態が厳しい中で、限られた生徒さんだけではなく全校生徒にノートを配布できたことの意味は大きいと思う。学用品の支出は少なくないので、ノートだけでも1年分を受け取ることができ、生徒さんの親たちも喜んでいます」とコメントを寄せてくれました。
ある報告によると、内戦の影響を受けたスリランカ北部、特に村落部では、学生が学校に通わなくなるケースが他地域よりも多く、その理由は、貧困や教育レベルに見合った就業機会の少なさにあるとのこと(注)。これからの地域の発展を担う子供たちが、少しでも明るい未来を描き、そして将来、ジェガンさんのように何らかの形で地域の発展に関わりたいという思いが抱けるように、このノートがその一助になれば、と願いながら、1冊1冊のノートを配りました。ご寄付をいただいた皆さま、心よりありがとうございました。
ノート購入費: Rs.565,072
各校へのノート運送費: Rs.33,000
支出合計: Rs.598,072
パルシック自己負担額: Rs.11,790(約9,696円)
※注 : IRIN Humanitarian News and Analysis、2014年2月7日付記事より
https://www.irinnews.org/report/99606/why-sri-lankan-children-in-north-drop-out(英語)