PARCIC

ムライティブ県帰還民の生活再建支援

ムライティブ日誌#6 共有井戸が完成しました

例年10月には始まるといわれているムライティブの雨季ですが、今年は始まるのが遅く、11月中旬になってやっと雨が降り始めました。潅漑に利用できる設備の整った貯水池が少ないムライティブでは、1年に一度の雨季はとても重要です。人々は稲を植えたり、ピーナッツの種をまいたりと準備をしながら、本格的な雨季が到来することを心待ちにしています。

カルナドゥカーニ村でのピーナツの種まき風景

カルナドゥカーニ村でのピーナツの種まき風景

雨季が始まる前は、一年の間で最も土地が乾く時期です。この時期に合わせてパルシックは共有井戸の掘削工事を行い、8月末に井戸が完成しました。雨季に入る前でも水量は十分にあり、人々は早速、生活用水として井戸を使い始めることができました。掘った井戸は、完成直後は水の状態が安定せず、色やにおいが出ることがあるので、しばらく飲用には使わずに水を汲み出し、水が安定するのを待っています。

井戸完成後、利用に関するワークショップを開きました

井戸完成後、利用に関するワークショップを開きました

カルナドゥカーニ村に住む、3人の息子を持つお母さんヴィジャヤナンティニさんの家の近くの井戸では、既に飲用もでき、周囲に住む5世帯がこの井戸を使っています。「以前は、近所で唯一の隣家のチューブ井戸(※1)を借りて使っていた。チューブ井戸は、水を手で何回もこいで汲まねばならず大変だったが、井戸ができて便利になった」と話してくれました。この井戸は海岸へ向かう道の途中にあり、海岸で漁をする漁師さんたちにも利用されています。

井戸を使って水浴びをするヴィジャヤナンティニさん一家

井戸を使って水浴びをするヴィジャヤナンティニさん一家

コクライ村のアールムハンさんも、井戸を飲み水用に使っています。井戸ができる前は、700mほど離れた個人宅の井戸を借りて使っていたアールムハンさん。家の近くに共有井戸ができ、水を運ぶ労力が減り楽になったと言います。家庭菜園や洗い物に井戸水を利用しているコクトルワイ村のパーナマディさんは、これまでは隣家のチューブ井戸を使っていたが、浴用や洗濯、家庭菜園の用途には井戸の方が使いやすく、便利になったと話し、雨季が終わるころには、井戸の水を飲み水としても使い始められることを期待しています。

孫を抱くアールムハンさん

孫を抱くアールムハンさん。(ちなみに、「アールムハン」はタミル語で「6つの顔」という意味。時に6つの頭を持った形で描かれるヒンドゥー教の神様、ムルガンにちなんだ名前だそうです。)

大規模に畑作を展開したり、二毛作を行ったりすることができるようになるまでのシステムはまだ整っていないこの村々ですが、生活用水源が徐々に整い始め、2013年末までには電気も開通するといわれており、少しずつ、村人の暮らしにも変化が生まれつつあることを感じます。パルシックは引き続き、コミュニティホールの建設、ホールでの生計向上のための研修や子供向けのプログラムの実施を通して、この地域の復興に貢献していきます。

(ムライティブ事務所 伊藤文)

※1 ビニール製の細いパイプを土の中に差し込んで水を汲み上げる。水量が少ないので、個人利用にしか適さない上に、長期の利用は難しい。