井戸建設事業の半年間があっという間に過ぎ、ムライティブでは9月から、パルシックの新しい事業が始まりました。先の事業では、基礎的な生活インフラが未だ復旧しない中、内戦中の避難先から帰還してきた人々へ生活用水を提供するため、共有井戸建設の支援を行いました。新しい事業では、帰還した人々のコミュニティの再建を目指して、井戸建設事業と同じ、コクトルワイ、カルナドゥカーニ、コクライの3村で、コミュニティホールの建設、住民のためのプログラムの提供を行います。
今週から早速、住民の皆さんへのアンケート調査を開始しました。アンケートの結果に基づき、ホールの設計、プログラムの内容を決定し、建設工事を始めます。内戦中、政府とLTTE(タミル・イーラム解放のトラ)、両軍の境界線が置かれたこの地域の人々は、内戦初期の1980年代から強制的に家を追われ、約30年に及ぶ避難生活を送ってきました。2011年になり、帰還が許されましたが、長年離れていた土地は、身近に地雷の危険があったり、荒れ果ててジャングルのようになっていたり、爆撃によって建物が破壊されていたり、時には自分の土地が別の持ち主のものになっていたり、と、多くの場合、戦争前と大きく変わった姿になってしまっています。そのような中で、戻ってきた人々の暮らしが始まっています。
コクトルワイ・ノース地域では、村役場にあたる場所も、椰子の葉の屋根と木の柱で作った仮小屋で、週に3日、村長が仕事にあたる日には、村の人々が生活の相談や各種の登録にやってきますが、雨季になると住民が集まることも困難です。この地域では、村役場の建物のほか、ホールを使っての子供のための課外授業や、医療出張所、女性のための裁縫教室などを実施してほしい、という声が上がっています。また、タミル人、シンハラ人の両民族が住むコクライ地域では、コミュニティ間での交流が生まれるよう、言語教室や、音楽などを通した文化行事を行うことを計画しています。
コミュニティホール建設、プログラム実施の事業は、3年間のプログラムの1年目で、2年目には3村の漁業復興のための魚市場・船着き場の建設、3年目には養殖などの持続可能な漁業技術の導入を行うことを予定しています。長く離れていた自分の村での生活を少しずつ取り戻しつつある人々の、これからの復興の道のりを、共に歩けるような事業にしたいと考えています。
この事業は、日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施します。8月30日にはコロンボにある日本大使公邸で、新事業の契約式が行われ、粗(ほぼ)特命全権大使とパルシックの間で、事業実施に関する契約を交わしました。
次回は井戸完成後の状況についてご報告します。
(ムライティブ事務所 伊藤文)