デニヤヤでの紅茶有機転換事業では、茶畑の有機転換を進めると同時に、有機紅茶を加工できる工場が必要です。スリランカでの有機紅茶生産は、インドや中国など他の茶生産大国に比べて随分と遅れをとっています。大規模茶園の紅茶加工工場では、メインの非有機紅茶生産の片隅で有機紅茶加工を行っているところはいくつかありますが、有機紅茶生産をメインで行っているのはスリランカ国内で4,5件のみです(非有機の紅茶も加工しているが、あくまでメインは有機の工場)。さらに、デニヤヤ紅茶の近隣でとなると、1件しかありません。その1件であるアヒンサ有機紅茶工場で私たちの茶葉を加工してもらっています。今回は、茶葉の出荷から、紅茶になるまでのプロセスについて一通りご紹介します。
まず生産者グループは毎週木曜に、有機転換茶畑から新芽を摘んで共同出荷します。出荷の際は、それぞれのメンバーが収集地点まで茶葉を運び、重さを測定し記録します。この記録によって後ほど茶葉代が支払われます。工場に運ばれた生茶葉はすぐに一次加工工程にかけられて、翌日の午後には紅茶(荒茶と呼ばれます)になります。
ちなみに、デニヤヤの茶葉が運ばれる工場では、茶葉が着くとまずは品質を確認するためのサンプリングチェックが行われます。「ラン・ダル(シンハラ語で金色の芽の意、柔らかく綺麗な葉のこと)」が全体の70%以上を占めることが理想です。
サンプリングチェックの後は、以下の工程1から5までを翌日中に終わらせます。
ここまでの過程で、生茶葉が「紅茶」になります。デニヤヤのアールグレイ紅茶には、さらにこの紅茶に天然のベルガモットオイルを混ぜ、パッケージされるという過程が待っています。次回はいよいよ、最後の段階の加工、船に積むまでの様子をご紹介する予定です。
ちなみにアヒンサ工場は、スリランカ人で、長く中国で農業開発事業に携わったり、アメリカの大学で教鞭を執られたりしていたピヤセナ博士が私財を投じて作ったものです。放棄されていた茶・ゴム園だった土地を1999年から購入し始め、有機紅茶栽培、混植栽培植物としてスパイスや木材などの栽培を開始し、有機紅茶加工工場としては2011年から本格稼働を始めています。「アヒンサ」とはサンスクリット語で「非暴力」を意味します。博士が若いころ、スリランカ国内、特に南部では行き過ぎた社会主義支持者による大混乱が起こり、大量の血が流されました。そこで、この「アヒンサ」という名前を工場につけたということです。
(スリランカ デニヤヤ事務所 高橋知里)