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デニヤヤ小規模紅茶農家支援

#3 農家指導を担当するスタッフと、取り組む課題

デニヤヤでの紅茶の有機転換事業、主役は農家のおじちゃんとおばちゃんですが、今回はその農家をサポートしているスタッフ、そして彼らと一緒に取り組んでいる課題について紹介します。

農家を毎日訪問して有機栽培についての指導や栽培記録の指導をしているのが、サラットさんとケルムくんです。この2人は、現地協力団体セワランカのスタッフで、日々の農業指導はこの2人が担っています。

サラットさんは、もともと事業地キリウェラガマ村の小規模紅茶農家です。サラットさんのお父さんはアーユルベーダ医師で、村ではリーダー的な存在の方でし た(まだご健在ですが、医師は引退しています。たまに英語のアーユルベーダの本を見せてくれますが、専門的すぎて全く分かりません)。サラットさんはその 後をついで(アーユルベーダは継いでいませんが)、村の色々な面で牽引役を担っていて、たとえば2006年にデニヤヤ一帯を襲った大洪水後の復興や、村道の舗装事業などでセワランカのボランティアスタッフとして働いてきた人です。そして、現在はこの有機紅茶事業に無くてはならない存在です。

サラットさん

サラットさん

ケルムくんはセワランカのフィールドスタッフで、以前は隣のハンバントタ県での有機家庭菜園事業に携わっていた、有機農業の専門家です。農業指導と同時に、シンハラ語での資料作成や研修準備、参加農家のミーティングの準備とファシリテーターなどなども担当しています。とても人なつっこく、年齢が若いこともあり、農家のおじちゃんたちにもかわいがられています。ちなみに彼の目下の課題はダイエットです。

配布した牛舎建設用資材を確認しているケルムくん

配布した牛舎建設用資材を確認しているケルムくん

彼らと一緒に参加農家は土壌改善、収穫量安定・増加に取り組んでいます。事業では有機堆肥を作るために、牛を1世帯に1頭配布しています。牛のフンを利用して各世帯で堆肥を作り、施肥します。2011年度からの参加農家は、効率的に堆肥作りができるようになり、だいぶ畑の肥沃度が上がってきているとの実感を得てきています。

KGサラットさんのお父さんと牛と最近生まれた子牛

KGサラットさんのお父さんと牛と最近生まれた子牛

2012年度からの参加農家は、つい昨年11月に牛の配布をできたので、まだ堆肥の施肥が十分ではなく、これから根気強く土壌改善に取り組むところです。

土壌の改善の他に、もうひとつ大きな課題が、茶葉品質の改善です。スリランカの茶摘みは基本的に手摘みです。熱帯のため、1週間に1度は新芽が出て、茶摘みが可能です。私は茶摘みの基本は1芯2葉(新芽とその下の2枚の葉のみを摘む)と心得てスリランカに来たのですが、南部の小規模農家ではまったく実践されていませんでした。4枚目も5枚目もワシワシ摘んでいます。これは、近隣の工場が低品質の紅茶を輸出会社のティーバッグ用に生産しているため、4枚目も5枚目も買い取ってくれるからです。4枚目、5枚目の硬い茶葉は良い品質の紅茶にならないだけではなく、茶木の成長まで妨げてしまいます。茶葉の品質向上のための研修を実施したり、ミーティングや日常的なモニタリングの際にも、茶葉の品質向上の重要性を参加農家に理解してもらうべく、繰り返しています。私も参加農家の茶葉の回収、工場への輸送に立ち会い、摘みたての茶葉をチェックして、農家のおじちゃんたちに駄目出しをしています(笑)。茶葉の品質に少しずつ改善が見られていますが、まだまだ改善の余地があります。

紅茶加工を依頼しているアヒンサ有機紅茶工場にて、茶葉品質のサンプリングチェックの様子

紅茶加工を依頼しているアヒンサ有機紅茶工場にて、茶葉品質のサンプリングチェックの様子

 

(スリランカ デニヤヤ事務所 高橋知里)