2011年から始まったスリランカ南部州デニヤヤでの紅茶の有機転換事業ですが、ついに今月(2013年2月)、紅茶農家のおじちゃん・おばちゃんたちの頑張りの成果である紅茶を、日本に出荷できることになりました!これからしばらくの間は、この“紅茶便り”を通じて、おいしい紅茶が日本に届くまでの過程をお伝えしたいと思います!
初回は、スリランカの紅茶産業について、簡単にご紹介します。
スリランカはみなさんご存知のとおり、紅茶の世界有数の産地です。10年くらい前までは、スリランカは世界で1番の紅茶輸出国でしたが、ここ数年でケニアが一気に台頭してきて、それに続く中国、そしてその後にスリランカとなり、スリランカの輸出量は世界3位になっています(詳細な輸出量の世界シェアは、下にある円グラフをご覧ください)。ただ、生産量を見てみると、インドがグッと前に出てきますので、スリランカは世界で4位ということになっています。インドはたくさん作るけれど、同時にたくさん国内で消費するのです。スリランカも朝から夜まで1日中みんなお茶を飲んでいますが、2000万人ちょっとの人口ではやはり飲みきれません。スリランカで作られる紅茶の90%は輸出されます。
ちなみに、“スリランカ紅茶”よりも“セイロン紅茶”のほうが普段よく耳にする、という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?じつは“セイロン紅 茶”は高級茶の代名詞となっており、実際にスリランカのコロンボオークションでの取引価格は、他の国での取引価格を大きく引き離しています。スリランカで の紅茶輸出に関するルールはこの“セイロン紅茶ブランド”を守ために、とっても厳しいものになっています。紅茶の生産・輸出に関する記録は全て政府の紅茶 局に報告され、輸出・輸入の取引実績も管理されています。
ところで、“セイロン紅茶”と一口に言っても、スリランカでは産地、標高によってそれぞれ特色のある紅茶が生産されています。5大産地といわれる、ヌワラエリヤ、ディンブラ、ウバなどは高地(標高1200m以上)、キャンディは中高地(標高600-1200m)、ルフナは低地(標高600m以下)で生産されています(図:スリランカ紅茶の5大産地 参照)。日本でよく耳にするのは高地で作られるヌワラエリヤ茶やウバ茶だと思いますが、現在スリランカで作られている紅茶の6割以上が低地で作られるルフナ茶です。そして、このルフナ茶の生産は、イギリス植民地時代が終わってから紅茶栽培を開始した小規模農家によって支えられています。
イギリスの植民地だった頃から長いこと、スリランカでは、広く切り開いた丘陵地でのプランテーション農法による紅茶栽培が行われてきました。しかし、ルフナ茶の作られる低地では、2エーカー(約2450坪)ほどの小さな面積の茶畑で、家族経営で茶葉を生産しているところがほとんどです。さらに、茶畑にはバナナ、ココナッツ、マンゴー、パパイヤ、ブラックペッパー、ライムなどなどの様々な植物が植えられており、プランテーションの風景とはだいぶ異なっています。
紅茶の有機転換事業は、そんな小規模農家がルフナ茶を生産しているデニヤヤ周辺の農村で実施しています。
次回は、紅茶の素となる“茶葉”の栽培を、有機に転換すべく挑戦を続けている農家のおじちゃん・おばちゃんの様子をご紹介したいと思います!
(スリランカ デニヤヤ事務所 高橋知里)