2年目となる酪農を通した女性グループの生計支援事業では、今年、ラファ地区のアルナセル村及びその近郊、アルショカ村の22の女性グループに加えて、隣県ハン・ユニス地区ギザン・ラシュワン村及びギザン・アルナジャール村の7グループが活動に加わりました。ハン・ユニス県の両村は2014年のガザ侵攻以降、人びとが被害の大きかった東部国境地域から、より内陸部へと移り住んだために人口が急激に増加し、支援も手薄となっていたため、農業省から要請を受け2年度から対象となりました。
現在、これらの29の女性グループが羊の畜産(子羊の販売)、酪農(チーズ作り)、水耕栽培用コンテナを使った飼料の自家生産に段階的に取り組んでいます。
活動が2年目に入ったラファ県の22グループはすでに子羊を4回販売し、母羊が妊娠中で、搾乳が可能な期間にはチーズ作りを行い、地域での販売も行っています。今後、さらにチーズ作りの活動を拡大していくことを計画しているため、当面の女性グループの課題は搾乳量の増加です。搾乳量は母羊の妊娠期間に左右され、160リットル得られる月もあれば、妊娠期間が合わず全くない月もあります。また、1グループの搾乳量だけでは大きな市場や卸売業者を相手に販売するには少なく、女性グループが集まって女性協働組合を組織し、共同出荷できる体制を作っていくことが必要となります。
2019年6月下旬頃から、女性組合設立に向け、女性メンバーたちの話し合いが始まりました。
「妊娠期間を調整し、搾乳時期をグループごとで割り振って、常に一定の搾乳量を確保できるよう、畜産を計画的にも行うべきよね」
「組合登録に必要な手続きは・・・」
とやることが山積みの中、話し合いにも熱が入っています。
組合登録に向けて、まずは組合管理を担っているガザ地区の労働省から講師を招き、登録プロセスや条件を学ぶワークショップを開催しました。また、ガザ地区中部デイル・アルバラ地区にあるアル・サワフィリ乳製品工場を工場長の厚意で見学させてもらい、搾乳量の増加のため、今まで手絞りで行っていた搾乳を自動化する機械の導入とトレーニングも始まりました。10月3日には “起業” や “ビジネス” のイメージをつかむために、ハン・ユニス地区で大きなスクリーンのあるイベントホールを無料で貸してもらい、レバノンのパレスチナ難民キャンプにおいてキャンプの女性たちとフードケータリングの起業に挑むマリアムさんのドキュメンタリー映画 “Soufra” をメンバーたちと鑑賞しました。
鑑賞後のディスカッションでは
「私たちとマリアムさんたちは置かれた状況も抱える困難や問題もとても似ている!」
「マリアムさんのようなリーダーシップを身につけたい!」
「彼女たちがやろうとしていることと私たちがやろうとしていることは、活動内容は違えども、とても似ていて参考になる」
などなど反響がたくさんあり、組合立ち上げに向けてより具体的なイメージをつかんだ様子でした。まだまだ遠い道のりを、一歩ずつですが、組合形成に向けて準備を進めています。
(ガザ事務所 タグリード)
私がプロジェクト参加者として選ばれるとは思っていませんでしたから、参加できて嬉しいです。今、私の自由な時間は何かポジティブなことをするための時間になりました。
義母は目と耳の両方が不自由で、人手を必要としています。子どもや夫の世話もあります。その中で、水耕栽培用コンテナを管理し、羊の世話のシフトをこなすので、本当にしっかり時間の管理をしなければいけません。当初はもちろん簡単ではなかったですが、今ではうまくやりくりしていますよ!時間を有意義なことに賢く使っています。
夏休みの間は、子どもたちが家事をすべて責任もってやってくれます。私がプロジェクトに時間を割けるできるようにね。
毎朝、水耕栽培用コンテナに行って大麦の生育状況をチェックしています。他のメンバーが大麦を栽培用トレイに広げるのを手伝い、生育スケジュールに従ってトレイの高さを入れ替えます。そしてそれぞれのメンバーに入れ替え後のお世話についてタスクの割り振りを行います。その後、羊飼育小屋に行ってグループメンバーの仕事をチェックします。サポートが必要な場合もありますから。午後は羊のチェックを行い、夕方には大麦の種を洗って翌日まで暗所に保管します。
プロジェクトを通してとても素敵な人びとに出会うこともできました。他の女性メンバーがお互いに訪問しあう機会があって、今でもよい関係を持ち続けるようにしています。
最初の収入を得たとき、とてもわくわくしました。乾燥機付きの全自動洗濯機を買いました(※ガザ地区では注水を手で行う半自動の洗濯機を使っている家庭も多い)。2回目の収入で服や靴、生活に必要なものを買いました。それに驚かないでね、お金が急に必要になった時のために貯金までしているのよ!自分が自立できていると感じています。
私は今では羊へのワクチンの注射の仕方を知っています。鳴き声で羊が何を必要としているのかがわかります。良い経験をたくさん積むことができて本当に幸運です。
昨年、羊の配布を受けたときのことを覚えています。夜、羊の出産があって、ずっと羊の赤ちゃんを温めて、様子を見守って授乳しなくてはいけなくて・・・すごく感動的だったわ!
もちろん課題もあります。私が気にかけていることは、プロジェクトを最後まで継続し、より大きなものへと発展させていくこと・・・私たちみんなが責任をもって全力で取り組んでいくことを願っています。将来、他の女性たちと協力してカェク(※アラブ地域の焼き菓子)やマフトゥール(※西アジア地域で食べられているクスクス。サラダやスープに使われる)を作ってさらに収入を得たい、というアイディアもあります。みんな料理は得意だし、やらない手はないでしょう?!
自分たちの手で生活を良くしていくチャンスをくれたことを、日本の人びととパルシック、そしていつも私たちのそばで支えてくれるパルシックガザチームに感謝しています。