そろそろ日も傾いてきて、おいとましようかとしていると、サーデクが村に2つある搾油所の1つにつれていってくれるとのこと。それはぜひ行ってみたい!できれば搾りたてオリーブオイルも買いたい!と厚意に甘えてマスハ村の搾油所へ。この日は週末の土曜日で開いているかどうか不安でしたが、搾油所はフル稼働中、何人もの農家さんが収穫したばかりのオリーブがぎっちり詰まった袋を持ち込んでいました。早速、いそいそと中を見学させてもらいます。珍客の乱入を不思議そうに見ていた搾油中の農家さんも「マルハバ!」と挨拶すると「いらっしゃい」と笑顔を返してくれました。
私たちが事業を実施するジャマイン町には、昔の伝統的な搾油所跡がカフェに改装されて残っていますが、こちらの搾油所はさすがに近代的です。この搾油所は地域の名士の一家の所有。村の農家さんは自由に搾油させてもらう代わりに、10ガロン(約38リットル)搾ったら1ガロンを使用代替わりに渡しているそうです。
搾油所の裏手に回るとオリーブの搾りかすが大きな山となっていました。ちょうど1台のトラックがのりつけていて、数人の青年が搾りかすの積み込み作業中。ジャマイン町でコンポスト作りの材料にも使用しているこの搾りかすですが、一部は家畜の飼料や冬季の暖房燃料に使われます。大量に出るため、持ち帰りたい人は無料で好きなだけ持って帰ってよい仕組み(それでも余る)。私たちも後でもらいに来なくては!
裏手から戻ってくるとサーデクが何やら搾油中の農家さんと交渉中でした。なんだろう、としばらく待っていると、搾りたてのオリーブオイルの入ったペットボトルを2本持って戻ってきて「自分の家のオリーブを搾油したら、彼に2本返す約束をしたから持って行ってくれ」と、なんと今日のお土産に持たせてくれました。搾りたてのオリーブオイルに思わずにやけてしまいました。
オリーブ収穫の時期に入り、最近ではイスラエルの違法入植者たちによる農家さんへの嫌がらせのニュースが相次いでいます。ナブルス県南部では収穫を待つばかりのオリーブ畑が放火[1]され、ラマッラーやナブルスではパレスチナの農家さんのオリーブ畑から勝手にオリーブを収穫していく入植者が目撃[2]されています。昨年、東エルサレムのオリーブ農家さんの畑に収穫のお手伝いに伺った時には、何気なく拾いあげたオリーブの実の隣に銃の薬きょうが落ちていて衝撃を受けました。
[1] Israeli settlers torch olive trees after illegal outpost evacuated south of Nablus (MA’AN NEWS AGENCY )
[2] Israeli settlers steal olive harvest, attack Palestinian farmers in West Bank (MA’AN NEWS AGENCY )
サーデクの畑から5分も車で走れば、オリーブの畑を見下ろすかのように丘の上で拡大を続ける違法入植地の威容が現れます。オリーブはパレスチナの主要産業であり、人びとの豊かな生活の営みの一端。農家さんたちが無事に収穫を終え、この豊かな実りを祝えるよう願わずにいられません。
ラマッラーへ帰る道すがら、普段は閑散としている道路のわきに点々とたくさんの車が止めてありました。これはいわば、パレスチナの「秋の風物詩」。そのすぐそばには、広いオリーブ畑の中、家族でいまだ収穫作業にいそしむ人びとが見えました。
(パレスチナ事務所 盛田)