石巻市北上町十三浜の新古里農園ではハマナスが咲き始めました。
3年前の秋に、市内の防潮堤が建設される砂浜から約200株を農園の花畑に移植しました。ハマナスは海岸沿いに自生するバラの原種で、花や実を食べることができます。石巻では、津波によって絶滅の危機に瀕し、群落があるのは農園を含め2箇所だけとのことです。剪定や株分けの方法を学び、冬の間に手入れを行った結果、今春は大きな花が次々と咲くようになりました。このハマナスの香りと鮮やかな紅色の花びら、ビタミン豊富な実を、リンゴや梨などの果物と合わせてジャムにしたり、ドレッシングに入れたりして、特産物を作り出す試みを続けています。ハマナスの花びら入りリンゴジャムは「口の中で花の香りが広がる」「上品な気分になる」とイベントでの試食販売も好評でした。
当初「こんなもの植えてどうするの?棘だらけで草取りの邪魔になるだけ」と北上の人たちには不評だったハマナスですが「震災前は浜のあちこちにあった」「子どもの頃、実をおやつに食べた」「地方によってはお盆に実を飾る習慣がある」と昔を思い出す人や「ハマナスのトゲが獣避けになる」「高台に家を建てたら庭に植えたい」と株分けを希望する人もいます。最近では、農園のスタッフだけでなく、石巻市内や仙台からも、ハマナスの栽培や加工に興味のある人たちがこの活動に参加するようになりました。
「海がすぐそこにある」農園ならではの取り組みに興味をもち、訪れてもらえるよう創意工夫していきたいと考えています。
(北上事務所 西村 陽子)
※この事業は、ジャパンプラットフォームの助成を受けて実施しています。