インドネシア・スラウェシ島の支援事業に携わっているのに、何故バリ島かと思う方もいらっしゃるかと思いますので、私の現状を簡単にご説明します。
昨年の3月初旬に初めての新型コロナウィルスの感染者がインドネシアで確認されました。それを受けて、同月16日には事業地のある中央スラウェシ州知事から外出自粛要請が出されました。また、当時は国外からウィルスが流入したため、同時に外国人の中央スラウェシ州への入域が禁止されました。この時期、諸手続きでスラウェシ島を一時離れざるを得なかった私は、この措置のためにスラウェシ島に戻ることができなくなり、それからはバリ島を拠点とし遠隔で事業管理をしながら現在に至ります。
皆さんもご存知のようにバリ島は世界的に有名な観光地の一つで、バリ州の国内総生産(GDP)の約6割が観光業に起因していると言われています。そんな中、昨年3月下旬には海外からの観光客の受け入れを禁止したため、大打撃を受けています。また、国内からの観光も禁止したため、数か月はほとんど観光客がいない状態でした。国内外の観光客で賑わっていたクタやウブドなどはゴーストタウンのように化していました。
観光客が一切来なくなったため、多くのホテルやレストランなどが一時閉鎖に追いやられ、職を失った人や無期限の無給休暇を強いられている人たちも多くいます。少々古い情報ですが、2018年海外からバリに訪れた観光客は600万人。インドネシア国内からバリを訪れた観光客は約98万人。ほとんどの観光客が昨年3月以降訪れなくなったバリの経済的影響は計り知れません。 昨年7月末にようやく国内の観光客の受け入れを再開し、少しずつではありますが、週末や連休を利用し、ジャカルタやスラバヤなどの大都市から訪れる観光客を見かけるようにはなりました。ゴーストタウンだった観光エリアも営業している店やレストランも増えたとはいえ、歩いている観光客はほとんどいませんし、貸店舗や売店舗の看板を掲げたお店を多く見かけます。
海外からの観光客に関しては、昨年9月11日から海外の観光客を受け入れると発表があったものの、感染状況を鑑みインドネシア政府が承認をせず、現在も海外からの観光客を受け入れていません。
それでも、ジャワ島などから出稼ぎに来てる人たちは頼るところがなく本当に大変なんだろうなと思いつつ、バリ人は家族や親戚との結束が強く、きっとお互い助け合っているはず、またバリ州はインドネシアの中で裕福な州でもあるし、何とか生き延びているはずだと思っていました。
そんな考えを覆すような英文記事を読んで、状況は深刻なのだと改めて実感しました。 その記事によると、新型コロナウィルスの影響を受ける前から、観光業から恩恵を受けられていない貧しい地域が存在していた。しかし、観光業に携わる家族や親戚によって生活は出来ていたが、その家族や親戚もコロナ禍で仕事を失い収入が途絶え、さらに貧困問題は深刻になっている。また、以前は最低賃金で収入を得て移動手段のバイクもあり新しい靴も履いていて一見問題なさそうだった世帯も職を失い、より深刻な状況に陥っているそうです。前者は以前から貧困を経験しているので何とか生き延びる術を知っているが、後者はそのような術も知らず、自分には価値がない、自業自得だと精神的に病む人たちが多くいるそうです。
普段は引きこもり生活をしていて、スーパーなどに食材を買いに行く程度なので、バリの現実を分かっていなかったんだと記事を読み正直ショックを受けました。
インドネシアで初感染が確認されて早くも11か月が経とうとしています。収束傾向にはなく、第1波が去年の3月からずっと続いています。検査体制が整ってきているのか、変異種の流入もあってなのか、感染者数は今も増え続けています。1月17日現在、累計の感染者数が90万人を超え、死者数は2万6千人になっています。1月16日に確認された感染者は1万4千人を超えました。バリ州に関しては、1月17日現在、累計の感染者が約2万1千人を超え、死者数は6百人近くに迫ってきています。1月17日に確認された感染者は約260人でした。
インドネシア政府及びバリ州政府は海外からの観光客を早く受け入れられるように模索しているようですが、世界中で感染拡大が続く中、近日中に受け入れ再開を始められるような状況にないのだと思います。例え何らかの施策をもって受け入れを始めたとしても以前のような状況に戻るまでには時間がかかると思われます。インドネシアに限らず日本も含め感染が拡大する中で、不安だらけの時期ではあります。早くこの事態が収束に向かい、少しずつでも海外からの観光客がバリに戻る日が訪れることを心から願っています。
バリ在住の日本人YouTuberがたくさんいる中で、 私が唯一チャンネル登録しているのがBali Saya Channelです。
バリ育ちのサスケさんが町中でバリの人たちにコロナの影響についてインタビュー している動画です。
生活が大変でありながらも前向きな姿に力をもらうような気持ちになりました。
私が撮影した動画ではありませんが、この現地レポートを見てくださった皆さん にも共有できればと思い、サスケさんに相談したところ、快諾してくださいました。サスケさん、ありがとうございました!
(スラウェシ事務所 飯田彰)
※この事業はジャパン・プラットフォームの助成と皆さまからのご寄付で実施しています。