PARCIC

インドネシア中部 スラウェシの地震・津波被災者支援

コロナ禍の子どもの居場所活動

3月16日、中部スラウェシ州の知事から外出自粛要請が出され、学校が閉鎖となりました。インドネシアの学校は7月が新年度の始まりですが、学校閉鎖は昨学年度中続き、新学年が始まる7月から学校ごとにオンラインや課題配布などで対応している状況で、中部スラウェシ州においては通常の対面での授業が未だ行われていません(8月31日時点)。

パルシックの子どもの居場所活動も、3月16日以降、学校閉鎖の通達に従い一時中断することになりました。外出自粛が続き、学校にも行けない日々が続く子ども達のストレス軽減やリフレッシュができればと、パルシックではコロナ禍においても新型コロナウィルスの感染症対策を守り、試行錯誤をしながら活動地である3つの村の状況に合わせて、4月下旬から様々な形で子ども達への活動を行なってきました。

各村ごとの活動

新型コロナウィルスの感染者が確認されているパル市から、車で約30分とほど近いソウロウェ村と隣接のカラワナ村では、パル市在住のファシリテーターが村を訪問することは避け、週に1〜数回、子ども達および保護者と電話でのコミュニケーションをとりました。保護者とは新型コロナウィルスに関する情報を共有したり、子どもの様子や家の状況などを聞き、子ども達とは電話ごしにクイズやゲーム、コーランの章句の勉強などをしました。

パル市から車で2時間以上山道を進んだ先にあるナモ村では、村の住民以外の出入りが少なく、ファシリテーター自身もナモ村の住民であるため、手洗いの敢行や大人数での集まりを避けるなどの感染症対策に気を配りながら活動を行いました。子ども達が家に持ち帰って遊べるように、塗り絵などの印刷物、折り紙の配布を週に2度行なったほか、各ファシリテーター宅で子ども達を受け入れ、少人数に制限した子どもの居場所活動を行いました。そのほか障がいを持った子ども達の家を定期的に訪問しました。

ナモ村ファシリテーターの家で塗り絵をする子ども達

ナモ村ファシリテーターが定期的に家庭訪問した障がいを持った子ども。初めのころは緊張した顔を見せることが多かった。 

今ではたくさん笑顔を見せてくれるようになりました。

3村共通の活動

家で過ごす時間に使ってもらおうと、未就学児〜小学生向けにクレヨンの配布、すべての子どもにインドネシアの童話集の配布を3つの村それぞれで行いました。また、新型コロナウィルス感染拡大前の子どもの居場所活動では、障がいを持った子ども達も参加して他の子ども達と一緒に遊ぶほか、ファシリテーターが障がいを持つ子ども達の家を訪問していましたが、他の子ども達が「障がいとは何か」を学ぶ機会を作れずにコロナ禍に入ってしまいました。そこでメンタルヘルスの分野で活動している現地団体と協力して障がいに関して学ぶ本を作成し、ファシリテーターが子ども達と保護者に本を作成した趣旨について説明をしながら配布しました。

本の内容は、身体障がいや知的障がいを持った子どもの生活や、家族・友達との繋がりを題材にしたいくつかのフィクションです。物語の中では、普段子ども達や保護者が、障がいや障がい者をさす時に使う”cacat”という差別的なニュアンスを持つ言葉(明らかな悪意を持って使うというよりは、他に言い方を知らずという場合が多い)を避け、代わりに「障がいを持った(人)」という意味の言葉を使いました。障がい者をさす意味での”cacat”という言葉の使用をこの機会になくし、新しい表現を学ぶことが大切な一歩と考えての試みでした。

配布から数日後には、ファシリテーターが少人数ごとに分けた子ども達のグループを訪れて、読後のフォローアップとして感想を共有したり、2人組になって「足が不自由」「手が不自由」「目が不自由」などの役割を演じる疑似体験の機会を持ちました。

クレヨン、インドネシアの童話集、障がいに関して学ぶ本を受け取るソウロウェ村の子ども

障がいの疑似体験をするナモ村の子ども達

保護者からは、「コロナ感染拡大が続くなかでも、子どもたちのために活動してくれてありがとう。配ってくれた本も勉強になる」との声をいただきました。不定期に子ども達を訪れたり電話をするなかで「ねえ、いつCFS(子どもの居場所活動)いつ始まるの?」と何度も何度も聞かれました。しかし残念ながら、新型コロナウィルス感染予防のため、事業期間中に子どもの居場所活動を通常の形で再開することはできませんでした。本記事を書いている8月末、ファシリテーター達は新型コロナウィルスの感染症対策を守りながら、各村側の協力を得た上で、子ども達へのお別れの訪問とマスクの配布をしているところです。

お別れの訪問をしたカラワナ村の子ども達

ファシリテーター達自身も地震の被災者であり、子どもの居場所活動を通して彼ら自身の心の回復に繋がった部分もあると感じています。あるファシリテーターは「自分も子どもの時に、こんな場所が欲しかった。子どものときに自分がして欲しかったことを、子ども達にしてあげたい」と言っていました。子どもの居場所活動は8月31日をもって終わりとなりますが、これからも被災地での支援活動は続きます。新型コロナウィルスの感染拡大という今まで誰も経験したことのない状況下ではありますが、私達にできることを最大限行なってまいります。

(スラウェシ事務所 松村多悠子

※この事業はジャパン・プラットフォームの助成とみなさまからのご寄付で実施しています。

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