“Seroja” インドネシア語で「蓮」という意味を持つ熱帯性低気圧、サイクロン・セロージャは、2021年4月4日未明以降、数日間に渡りインドネシア東部や東ティモールに豪雨、暴風、土砂崩れ、洪水、川の氾濫といった多様な災害を引き起こしました。インドネシアでは主な被災地である東・西ヌサ・トゥンガラ州を合わせ181人が死亡、45人が行方不明、6万6036戸の被災家屋、50万9604人が避難民となりました(2021年4月13日現在)。パルシックは東ティモールでこの災害による被災者への支援を行っていますが、同じティモール島の西側、インドネシア側でも支援活動を行っています。
ティモール島の中央に位置し、東ティモールとの国境を有するマラカ県は、豪雨による洪水被害が特にひどかった地域です。さらに、州都クパンへ続く橋の崩壊、暴風被害のひどかったクパン市周辺での送電線への被害により、西ティモール全体が不安定な電気供給と不安定な通信状況に陥りました。
その結果、マラカ県の被害状況がなかなかクパン市に拠点を置く東ヌサ・トゥンガラ州サイクロン・セロージャ被災対策本部などに伝わらず、州内のその他の地域に比べ支援が遅れていました。そこで、パルシックはクパン市に本部を置く現地提携団体と共にマラカ県で被災者支援を行うことにしました。
事業の開始は6月下旬となり、サイクロン被災から2か月以上が経っていました。そこで、ある程度の支援が行われた食糧や生活用品の配布ではなく、農地が被害を受け、蓄えや次の種蒔き期のために保管していたトウモロコシなど穀物の種、農具や漁具、家畜といった生計の手立てを失った人たちの生計活動の再開を支援をすることにしました。再開に必要な配付物を、農業、漁業、養鶏の3種のセットに分け、対象となった住民の希望に添って配付を行いました。
支援の対象は農業・漁業を生計の柱とする世帯で、さらに障がいのある人のいる世帯、乳幼児のいる世帯、女性が一家の大黒柱となっている世帯、高齢者世帯などを優先しました。配付にあたっては、新型コロナウィルス感染拡大予防に努めながら、各村の集落ごとに配付日や配付時間を割り振り、配付場所である村役場に一度に大人数が集まらないようにしました。10月末に、3村で合計1,335世帯への配付を終了しました。
配付の終わった現在は、資材を受け取った各家庭へのモニタリング、それから各村でのFGD(フォーカス・グループ・ディスカッション)に向けての準備を進めています。FGDでは、防災をテーマに行う予定です。11月上旬の現在、同じ西ティモールの州都クパンや隣県の県都アタンブアではまとまった雨が降り出しており、マラカ県でももうすぐ雨季が始まる時期だと言われています。雨季には、また水害も心配されますが、村の方々が以前よりも水害に備えられるように活動に取り組んでいきます。
(マラカ事務所 松村多悠子)
※この事業はジャパン・プラットフォームの助成と皆さまからのご寄付で実施しています。