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[開催レポート] 7/13 マレーシアカフェ~政権交代から1年、社会の変化とペナンでの活動~

こんにちは、東京事務所インターンの山口です。

2019713日(土)に、マレーシアの政治情勢とマレーシアでのパルシックの活動についてお話する「マレーシアカフェ」が開催されました。パルシックの活動だけでなく、マレーシアという国、最近の情勢について、インターンとして学ぶことが多い有意義な時間でした。

開催レポート

マレーシアカフェ ~政権交代から1年、社会の変化とペナンでの活動~

日時 : 2019年7月13日(土)14:00~16:00
会場 : パルシック2階会議室
講師 : クー・ブー・テック(Khoo Boo Teik)氏(政策研究大学院大学教授)
主催 : 特定非営利活動法人パルシック
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「Malaysia one year after the 2018 general election」/ 講師:クー先生

今回は、講師としてペナン島出身のマレーシア人で政策研究大学院大学教授のクー先生を招き、マレーシアの政治情勢についてのお話を拝聴した。まず初めにクー先生は2018年5月9日にマレーシアで行われた第14回総選挙で、マハティール・モハマド氏が率いる政党連合の希望連盟(Pakatan Harapan、以下:PH)が勝利し、同国史上初の政権交代が実現したことから話された。

選挙結果は、下院の222議席のうち、希望連盟(PH)が獲得したのは113議席、すなわち半数プラス2議席であり、PH加盟政党のサバ伝統党(WARISAN)8議席と合わせても得票数は48%にすぎない。それにも関わらず、勝利できた背景には61年間に及ぶ与党国民戦線(Barisan Nasional)と前ナジブ政権の汚職体質への国民の大きな不満があったという。

1957年の独立から20185月まで、マレーシアでは与党国民戦線による統治が続いていた。しかし、ナジブ前首相による政府系ファンド「1MDB」の不正資金流用疑惑に絡む多数の汚職容疑(42の罪で訴追)が痛手となり、マハティール氏が政権を引き継ぐ結果になった。

この政権交代までの流れについて、日本含む海外のメディアでは92歳のマハティール氏(2019年現在は94歳)に関心が集中し、政権交代を同氏のカムバックという文脈で語りがちだが、この間に活動してきた市民の政治を変えるための努力を知り、もっと焦点を当てるべきだと、クー先生からの指摘があった。

また、今回の総選挙にあたり、マハティール氏は100日間で達成されるべき10項目と中長期課題の取り組みを盛り込んだ公約を掲げている。政権交代後のマハティール首相は、早速この公約に基づき、以下に取り組んでいる。

■  政治(・外交)面

■  経済(・財政)面

■ 社会(・文化)面

このように政治が刷新され、新しい国に生まれ変わることに対する希望から、国民の間では「新しいマレーシア」という言葉が流行し、新政権に対して大きな期待が寄せられているという。

また一方で、クー先生は新政権のリスクについても言及した。具体的には新政権が公約を果たす上で、不安要素となる後継者問題による政権の不安定さ、首相や一部を除く希望連盟(PH)政権の人びとの与党経験の浅さなどである。是正措置としてマハティール首相は、2年以内にアンワル氏へ首相の座を譲ることや、内閣や諮問機関の重要な役職に民族のバランスのみではなく実務経験のある人物をバランス良く配分することなどの措置をとっている。

しかし、過去に1997年、98年の通貨危機の際に経済政策の違いから決裂し、その後アンワル氏を投獄した張本人がマハティール首相であり、今後アンワル氏が次期首相になることによって改革が進むのか、あるいは遅れてしまうのか、注視が必要である。

最後に、クー先生は前政権の汚職スキャンダルについて、現政権が捜査を行っているが、この新しい政治改革を進めていくには汚職に関わった人たちを罪に問い、検証しなければいけないと講義を締めくくった。

マレーシア料理とパルシックの活動紹介

その後、休憩をはさんで、マレーシアの軽食を食べながら、パルシックのペナンでの活動についての紹介となり、2010年から支援しているペナン州にあるスンガイ・アチェ村の小規模漁民グループ(PIFWA)の植林活動2014年から支援しているPIFWAの女性グループ PIFWANITA(PIFWAの女性たち:WANITAは女性の意)による食品加工と栄養改善、事業実施の経験を生かした教育プログラム・民際教育事業についての説明があった。

その際にマレーシア料理やPIFWANITAが生産しているマングローブの実を使ったジャム、マングローブの葉で作ったお茶などをいただいた個人的なお気に入りは写真に載っていないマングローブの実を使ったジャムパン

所感

今回、参加させていただいた中で得た一番の学びは、大きな波を掴むことの大切さである。

私はこれまで、スンガイ・アチェ村の活動など地域的な情報ばかりに焦点を当てており、政治・経済などマクロな情報特に海外には鈍感であった。しかし、今回の経験を通して、継続的な支援をする上で周囲を取り巻く大きな環境、つまり政治情勢などマクロな情報をキャッチし、予測を立てて指針を作ることの大切さを学んだ。

例えるなら、サーファーが大きな波を読んで、上手く波に乗る感覚に近いのではないだろうか。よって、これからは国際情勢などのマクロな情報にも、注意深く着目していきたいと思った。

(東京事務所インターン 山口勝太)