東ティモールでは標高1200mの高原、マウベシ郡の5つの集落(リタ、ロビボ、ハトカデ、ハヒタリ、ルスラウ)で、2009年から、女性たちがツボクサ、ミント、アボガドの葉、ライムの葉、スイートバジルの5種類のハーブティづくりに挑戦してきました。数年前からレモングラス、月桃の試作を開始し、2014年12月、新商品として日本へ出荷することができました。このハーブ作りに参加している女性たちの暮らしについて、少しご紹介したいと思います。
リタグループでハーブを作っているメンバーの一人、ドミンガス・メンドンサさんは4人の女の子のお母さんです。現在、上の2人は小学校に通っていますが、下の2人はまだ小さく、大変手がかかります。ドミンガスさんのご主人はコーヒー農園を営んでいますが、その傍ら、家庭で食べるためのインゲン豆、大豆、とうもろこしを植えています。また、たくさんの家畜を育てています。豚2頭、馬2頭、ニワトリ5匹、犬5匹、牛5頭、そして山羊を多数飼っています。そのため、ドミンガスさんの一日は大忙しです。朝は5時前に起床して家畜に餌をやり、家族の食事の準備、そして子どもたちの身支度等、子どもたちを学校にやるまでは息をつく暇もありません。
食事の準備は、まず薪で火をおこすことから始まるので、ガスを用いるよりも時間がかかります。また、乾季の間(年間3か月ほど)は雨が降らないため、近くの井戸の水が枯渇してしまいます。そのため、彼女は村の女性たちと一緒に、1時間以上かけて水を汲みに行きます。一度でたくさんの水を運ぶために、3つの大きな容器に水を入れ、両手に1つずつ、そして頭の上にも容器を1つ載せて、山の中のでこぼこした道を上手にバランスをとりながら歩きます。
子どもたちを学校にやり、少し一息ついたら、次は畑仕事です。畑では種々の野菜やコーヒーを栽培しているので、年間を通してさまざまな作業があります。土地を耕し、種を植え、収穫前には雑草をとり、そして収穫にいたります。ドミンガスさんは、お米や塩、食用油を買ったり、子どもたちの学用品や制服、運動靴を買うためのお金が必要なので、忙しい合間を縫ってハーブティーづくりに参加しています。
ハーブティーは製造プロセスはとてもシンプルで、健康に良い、優れものです。しかし、製造プロセスがシンプルだからこそ、非常に繊細な取扱いを必要とする製品でもあります。温度や湿気の微妙な違いによって、香りや風味が容易に損なわれてしまいます。
現在では品質も安定し、定期的にマーケットに製品を出荷することができていますが、製造を開始した頃は、各メンバーそれぞれが試行錯誤の連続でした。メンバーの中には、何日も丁寧に手をかけて作ったにもかかわらず、品質が良くなく、販売にいたらないまま、活動を中止した女性もいました。また、長い期間、品質改善のために悪戦苦闘した末、ようやく品質の高い製品を作ることができ、パルシックのスタッフともども、喜びを分かちあった女性もいます。
ハーブから得られる収入はごくわずかですが、女性たちは食費や学用品のために自分で自由に采配できる収入が得られることに、自信をつけているようです。そして収入を得るだけでなく、定期的に集まることで仲間の近況を知ることもでき、とても楽しいと言っています。わたしたちも、会うたびに女性たちが明るく自信をつけていっているように感じ、嬉しくなります。東ティモールの女性たちの姿を思い浮かべながら、ハーブティでホッと一息してみてはいかがでしょうか?
(東ティモール事務所 西原京春)