2011年3月24日、女性グループ「Hanoin ba Oin(前向きに考えよう)」の全体会議が開かれました。一年間の活動の成果を振り返り、他グループの女性たちとも共有するために毎年開いている会議です。4グループから20名の女性たちがパルシックマウベシ事務所に集まりました。
▲女性グループ全体会議の様子
▲ハーブづくりトレーニングで。
真ん中がマリアさん
(2010年9月16日撮影)
わたしたちは今回の会議で、女性たちとグループ活動の目的を再確認しよう、そして商品の売り上げから一部をグループ資金として積み立てていくことを提案しよう、と考えていました。これまでにソラマメチップス、はちみつ、大豆菓子、ハーブティ(試作)を作ってきました。僅かでも現金収入になることで女性たちは生産活動に積極的です。この勢いをもっと先につなげていくには、生産活動だけではない共同が必要になります。わたしたちは事前に「生活の質の向上」という共通の活動目的を掲げ、ここへ導く議論を始めようとしました。
「みなさんはどうして女性グループの活動に参加するのですか?」――パルシックスタッフ、アンジェリーナの質問に、はちみつ作りがうまくいってグループ活動が楽しくて仕方ないというハトゥカデグループのジョアニナさんは、「生活のため、子どもの学費を払うためです」と答えました。問答はほぼ想定どおりに進んでいます。「子どもを学校に行かせ、将来になにを期待するのですか?」という質問に、17人の子どもを産んだお母さんなのに街の少女のように初々しいルスラウグループのマリアさんは、「両親の苦労を償ってくれることです」と答えました。
見返りを求める?――そのような答えはまったく想像していませんでした。学校に行っていい仕事に就いてほしい。自分たちのような苦労は味わってほしくない。賢くなってよりよい生活をしてほしい。これらを実現することがすなわち生活の質の向上である、という道筋で考えていたわたしたちには、衝撃的な一言でした。しかしマリアさんはきっぱりといいます。「そのために男の子も女の子も、みんな学校に行くべきです」。
東ティモールにいまもしっかりと根付いている「生活の質」をあらためて教えられました。子どもたちは学校へ行き、賢くなっても、両親親類から受けた恩義を忘れるなと教育されます。お金であれ知識であれ、より多く得る機会を与えられたものは、お世話になった人たちへの恩に報いてこそ成功とみなされます。年金制度や社会保障制度などない東ティモールで、老人や仕事のない人びとが日々暮らしていけるのは、社会にさまざまな人びとを受け入れていくセイフティネットが機能しているからです。
この全体会議で、「生活の質を向上させる」という目的は共有されました。共通の資金を持つことも決議されました。こうした女性たちの努力を見て育つ子供たちが、マウベシの村々を離れ高等教育を受ける機会を得たとしても、東ティモールに根付いた「生活の質」を大切にしていってほしいと思います。
(パルシック 伊藤淳子)