PARCIC

トルコにおけるシリア難民支援事業

シリア人家族の厳しい冬に備えて−シリア難民への越冬支援−

電子バウチャーを活用した越冬支援物資の購入

最低気温が氷点下となり、細雪も降り始めたシャンルウルファ県では、厳しい冬を迎えようとしています。シャンルウルファ市よりも更にシリア国境に近接しているハラン市は、広大な農地が延々と広がり、畑のなかに浮遊するようにシリア人世帯が点在しています。シリア人世帯の約25%がテントに、約64%が手造りの土壁の家に住んでいます。冷たい風を防ぐような木々もなく、吹きさらしのなかテント生活を送るシリア人の家族は、充分な暖房器具や防寒着も持っていません。

sr_20161226_a

広大な土地にシリア人の住居が点在するハラン市

sr_20161226_b

土砂漠のような地域でテント生活をするシリア人家族の住まい

 

このようなハラン市郊外の村々で生活し、他団体からの支援も届かないシリア人家族を対象として越冬支援を実施しました。526世帯に対して毛布やマットレス、ストーブ、防寒着などの越冬支援物資を購入できる電子バウチャーを配布し、入金された金額のなかで自由に必要なものを購入してもらいました。

商品の購入ができるのは、ハラン市中心にある2つのマーケットです。同じハラン市といっても、市の中心から最東部までは60kmほどあります。バス等の公共交通手段はなく、車を所有している世帯はほとんどありません。市の中心まで買い物に訪れるためには、近隣のトルコ人に車を出してもらったり、数世帯で車両を借りたりしなければなりません。そこで、各世帯の負担を少しでも減らすため、2つのマーケットから対象地の全体を繋ぐことができるシャトルバスを運行しました。

sr_20161226_d

電子バウチャーを手に買い物へ訪れるシリア人家族

 

配布した電子バウチャーがマーケットで使えるようになった初日には、各マーケットとも大混雑となりました。家族全員で来店する世帯も多く、大混雑の店内に圧倒され必死にお父さんの手を握る子ども達もいました。

最も人気だったのは、子ども服です。普段の生活のなかでは入手することが難しい子ども用のセーターやジャンパー、タイツ等を購入している家族が多くみられました。レジで規定金額が超過してしまっていることが分かると、自分のジャケットを店に返し、子ども服の購入を優先するお父さんの姿も見られました。

ハラン市郊外の村々に住むシリア人家族にとって、電子バウチャーを使用した市中心での買い物は1日がかりのイベントになります。朝から夕方まで2つのマーケットを行き来し、買い物が終わっても店内に残っている家族も複数みられました。「もう買うことはできないけれど、ただここにいるのを楽しんでいるんだ」とにこにこしながら話すお父さんもいました。

sr_20161226_e

自分用のズボンを選ぶシリア人の男の子

sr_20161226_f

冬服を求めるシリア人家族

 

住居の補強のためにブルーシートを配布

シャンルウルファ市・ハラン市郊外の村に住むシリア人家族の多くは、ブロックと土でできた住居やテントに暮らしています。トルコの南東部にあるこれらの地域は冬の間非常に冷え込み、更に降雨量が多くなります。脆弱な家屋は冬季において更に損傷しやすくなり、人びとの安全が守られなくなります。

テント全体や、土造りの家の屋根を補強できるよう、シャンルウルファ市では133世帯、ハランでは290世帯に対しブルーシートの配布を行いました。ブルーシートの配布期間中には既に天候が不安定となり降雨に見舞われ、ブルーシートを運ぶトラックが泥のぬかるみにはまってしまうこともありました。少しでも早くブルーシートを届けようと、冷たい雨風のなかでもスタッフ全員で村々をまわりました。ブルーシートを受け取った支援対象者からは「これで雨漏りが防げる」、「家を覆うことができたおかげで、子どもたちのために家の中を温かく保つことができる」という声をたくさんいただきました。

sr_20161226_g

天井を木枠や藁、土で覆った手造りの住居

sr_20161226_h

一世帯ずつブルーシートを手渡して配布