シャンルウルファ郊外に住む村の人びとにとっては初めて使うこととなる電子バウチャー。最初の入金は、スーパーマーケットの方々の温かい心遣いと、バウチャーが使用できる各店舗で待機していたスタッフのチームワークで無事終えることができました。
村の人びとへの電子バウチャーによる食糧支援で最も気がかりであったことの1つは、彼らの移動手段です。市内から離れた村に住む人びとにとっては、交通手段を確保するだけでも一苦労です。
1つの村に、戦闘に巻き込まれ視力を失ってしまった男性がいました。入金当日、トルコ人の友人に連れられてスーパーのレジに立つ彼を見て、思わず声をかけました。これまではなかなかお話しするタイミングがなかったのですが、今回初めて彼とお話しし、「ありがとう」と笑顔を見せてくれたことは何よりも嬉しい出来事です。
またスーパーマーケット側のご厚意で、車を手配してくださり、これまで移動のことを心配して両手に持ち切れる量の買い物しかできなかった人びとも、今回は一度に1カ月分の金額をしっかりと使い切り、帰っていきました。やはり移動を考えると、そう何度も市内まで来ることは難しいようです。
ある商品を使った料理の方法について何やら真剣にお話している女性2人がいました。私もついでに教わろうと聞き耳を立ていると、その横からご主人が「そんなの買わなくたっていいだろう」とその商品をカゴから出そうとして、女性2人から叱られ、しぶしぶカゴに戻す、というほほえましい風景もみられました。
またある男性は、シリアでは地理を教える先生として働いていたこと、村にいる子どもたちの教育についてとても心配していること、今はバイクの修理をして生計を立てていること、などをお話してくれました。彼がお店の用意してくれた車に購入済みの商品を積み込むのを手伝っていると、1つの袋にブドウが入っているのを見つけました。子どもたちの為に買ったのだ、と教えてくれました。果物は通常、支援対象者が購入する商品の中で、購入優先度が最も低くなるものの1つです。きっとブドウよりも大事なものがあったに違いないのですが、“子どもたちを喜ばせる為に買ってあげたい”という、お父さんの優しい想いが垣間見えました。
バウチャー受け渡し登録でお宅訪問した時に、知らない大人たちを前に固まっていた女の子(アーヤ)にも出会いました。スーパーマーケットでは筆者の顔を見て、そばに寄って来てくれました。お父さんにバナナを買ってもらったようで、バウチャーの配布が微力ながらアーヤの成長に貢献してくれていると嬉しく思います。
(シャンルウルファ事務所 宮越)
※この事業はジャパン・プラットフォームの助成と、皆さまからのご寄付で実施しています。