PARCIC

トルコにおけるシリア難民支援事業

家族で楽しいひととき -シリア難民家族のためのイベント開催−

シリア難民の子どもたちを対象とした移動式チャイルドフレンドリースペース事業では、学習活動のほか、戦争や避難生活により影響を受けた子どもたちの情緒的安定を目指す、心理社会的活動を実施しています。子どもだけでなく家族や親戚全員がストレスを抱えながら生活する中で、子どもと保護者が日常から逸した特別な時間をもち、一緒に楽しんだり想いを伝え合ったりするきっかけをつくるため、家族を招いた特別イベントを事業対象の各村で開催しました。

イベントに向けて子どもたちからの意見を聞きながら準備し、子どもたちから家族へ手紙を送ることを決めました。男の子も女の子も、絵を描いたり習った文字を使ってメッセージや名前を書いたりと手紙作りにとても興奮し、また何を伝えたら良いのか迷って手が止まってしまう子どももいました。スタッフの声がけで、家族の誰にどんなことを伝えたいかを一緒に考え、次第に各々自分のアイディアで手紙作りに取り組みはじめました。


熱心に手紙作りに取り組む子どもたち

スタッフと子どもたちとの話し合いで、この手紙は家族に内緒にしておくことにしました。手紙のほかに、子どもと家族が楽しく伸び伸びと時間を過ごせるよう、一緒にできるゲームやプログラムを考えました。保護者の方々には事前に文面や電話で連絡し、保護者を含めた集会として日時をお知らせし、参加を促しました。

イベント当日は、農作業や家事の合間を縫ってほとんどの子どもたちのお父さんやお母さんが参加してくれました。イベントの冒頭で、これまでのパルシックの活動や子どもたちの様子を伝えるため、勉強に励んだり、生き生きと遊びを楽しむ子どもたちの写真をスライドで紹介しました。その後、家族ごとに集まって子どもたちが用意した手紙をプレゼントしました。思わぬプレゼントに、保護者の方々はとても嬉しそうに手紙を受け取っていました。特にお父さんたちからは「自分の子どもが文章や絵で気持ちを表現できるようになって、誇りに思う」、「文字を書いたり絵を描いたりできるようになって、子どもの成長を感じる」という言葉が聞かれました。

一方の子どもたちは、自分の作った手紙を受け取ってもらえ、また絵や文字で表現した自分の気持ちが伝わり、恥じらいながらもとても喜んでいました。


手紙や子どもたちの気持ちを受け取るお父さん達

全体の空気が打ち解けたなかで、保護者の方々にも参加してもらい子どもたちとゲームをしました。普段は農作業や家事などで忙しくしており、子どもと”遊ぶ”機会のない保護者の方々は、子どもたちにリードされながらも笑顔で参加し、なにより子どもたちがいつも以上に楽しそうに遊んでいました。


お父さんやお母さんと遊ぶ子どもたち

遊びの後には、親子の関係とコミュニケーションの重要性について描いた数分間のショートムービーを上映し、全員でオープン・ディスカッションを行いました。保護者の方々からは「子どもたちを無視せず、ちゃんと接することが大切だと思った」、「どんなに大変な状況にあっても、子どもたちの生活や未来を失わないために、気にかけて接することが必要だと感じた」という意見が挙がりました。子どもたちからの意見はありませんでしたが、お父さんやお母さんの感想を熱心に聞いていました。


親子関係や家族コミュニケーションについてディスカッション

イベントの終わりには家族の意見や要望を今後の活動に反映させるため、活動に対するフィードバックや家庭での子どもの様子について聞きました。どの保護者の方々からもこの活動に対する感謝の言葉がまず送られ、特に活動が始まってから子どもたちの言動や学力がぐんと改善されたことが述べられました。家庭や日常でも子どもたちがより自信を持って行動し、友好的でなかった子どもたちに友達ができ積極的になったという点が挙げられました。また、子どもが母国語であるアラビア文字を読み書きできるようになることは、すべての家族の願いと期待でした。

最後にスタッフから、子どもたちや保護者の方々に参加のお礼と、素敵な時間を一緒に過ごし、楽しむことができたことに感謝を伝えました。

(シャンルウルファ事務所 サード)

※子ども保護事業はジャパン・プラットフォームの助成と、みなさまからのご寄付で実施しています。

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