トルコでは、シリア難民の子どもたちへ教育や心理社会的支援を届けるため、移動式のチャイルドフレンドリースペース活動を4月から実施しています。
事業当初から、活動のなかで子どもたちの水分補給を目的にミネラルウォーターを配布しています。簡易的なプラスチック容器に入った200mlのミネラルウォーターは、トルコの飲食店などで一般的に提供されています。
しかし飲み終えたミネラルウォーターの容器について、子ども保護チームでは当初から懸念をもっていました。事業地のシャンルウルファ県では、市内でもゴミの分別はしておらず、特に村ではゴミを路上に投げ捨てることは一般的で、トルコ人もシリア人もゴミ処理や環境保全に意識が向いているとは言えません。
このような一般的習慣を考慮し子ども保護チームでは、子どもたちの創造力を促進しながら環境汚染を地域で防ごうと、子どもたちへ“リサイクル”の発想を提案していくことを始めました。まずは子どもたちにゴミの“リサイクル”について説明し、飲み終えたミネラルウォーターのプラスチック容器を、次にどのように使用できるか訊ねてみました。これまでゴミの再利用について気づきがなかった子どもたちも「筆立てみたいにして、ペンや鉛筆を入れられる」、「お金をカップのなかに入れて仕舞っておける」、「容器のなかで花を育てられる」など、次々にアイディアを出し始めました。
子どもたちとの話し合いや村の状況を考慮して、チームではこのプラスチック容器を再利用しながら子どもたちとともにマイクロ・ガーデニングに挑戦することを決めました。村に住むほとんどのシリア人、トルコ人家族は農業で生計を立てており、子どもたちも農作業を手伝っているため植物の栽培は身近に感じることができます。また農業に熟練した両親が活動に参加することができ、子どもたちと一緒に楽しんだりと、家族内のコミュニケーション機会を増やすこともできます。
容器を再利用して植物を育てるというアイディアは、子どもたちの好奇心をそそりました。チームから提供したのは、コットンと種のみ。コットンを使用したのは、種を発芽させるには土よりも容易で、子どもたちが種の変化を観察しやすいためです。種は、簡単に発芽しシリア人家庭で日常的に食されるインゲン豆とレンズ豆を選びました。スタッフの説明を聞きながら、子どもたちひとりひとり自分が飲み終えたミネラルウォーターの容器内にコットンを敷いて種を置き、水を注ぎました。プラスチック容器には自分の名前を書き、みな自分が育てる特別な種を抱えて帰りました。
種は2週間ほどで発芽し、コットンを敷いたカップから土へ苗を植え替えました。子どもたちの家族も、発芽した苗をコットンから土に移す手伝いに参加したり、子どもたちにアドバイスしてくれたりと活動に積極的に参加してくれました。また、同じ村に住むトルコ人の子どもたちも参加し、興味をもって楽しんでいました。
子どもたちからは「自分たちの家の周りに土はあるけど、なにも生えてなくてなんだか寂しかった。家の周りに植物が植えられると嬉しい」、「野菜を植えられると家族で食べることができて、食べ物をもっと増やせる」という声が聞かれました。保護者は「子どもたちが1日中、苗を眺めて育つ様子を観察している。いつになったら食べられるようになるか聞いてくる」と話していました。
(シャンルウルファ事務所 マフムード)
※子ども保護事業はジャパン・プラットフォームの助成と、みなさまからのご寄付で実施しています。