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トルコにおけるシリア難民支援事業

シリア難民の子ども達の未来と笑顔をつくるために①

2015年10月からトルコにてシリア難民の家族へのサポートを続けてきましたが、活動を始めた当初から、シリア人の子ども達の生活や未来のために、なにかできないかと思案してきました。

紛争の記憶と、楽しかったシリアでの家族や友だちとの思い出が毎日のように蘇るなかで、突然生活を始めなければならないトルコでは、家族の経済的不安や適応の難しさ、行かれる学校のない状況からストレスを感じざるをえない日々が続いています。

2011年からの紛争以降、避難生活を続けるシリア人の子ども達

2011年からの紛争以降、避難生活を続けるシリア人の子ども達

2017年4月から、特に遠隔地である村々に住み、受け入れてもらえる学校がなく学習や心理社会的サポートを受ける機会を失ったシリア難民の子ども達を対象とした事業を開始しました。約80人の子ども達が生活する村々をチームで訪問し、移動式のチャイルド・フレンドリー・スペースとして、学習活動や心理社会的支援活動を実施しています。

シリア人の子ども達が抱える難しさ

難民として特に経済的困難に直面している家族のなかで成長する子ども達は、多くの難しさを抱え、心理的発達にも影響を及ぼしています。

農村地で生活するシリア人家族は、季節により農作業の職を求めて移住を続け、貧困により子ども達も保護者と共に農作業の手伝いをせざるをえません。移住の多さから、同じコミュニティでの安定した生活が築きにくく、子ども達の安心感に繋がりにくい日々が続いています。また家族の困窮した生活により、“子ども”でありながらも一家の一員として、責任を負って生活をしなければなりません。彼ら/彼女らは“子ども”であることができず、“おとな”としての役割を家族からも求められているため、“子ども”として褒められ、自信をもつことのできる経験がほとんどありません。

定職につくことができず、日雇い労働により生計を立てることがほとんどである保護者自身もストレスを抱えています。一般的にシリア人の家庭では、母親は家で子どもと時間を過ごしますが、母親も働かざるをえず、家で子ども達だけで過ごしている家族も多く見られます。また、慢性的な食糧不足により栄養摂取が充分でなく、子ども達は心身ともに充分なケアが受けられていない状況にあります。一緒に過ごす時間の短さも影響し、保護者と子ども達の間でのコミュニケーションも困難となり、親への信頼感が低下している子どもも多くみられます。

家族の一員として責任を負いながら生活する子ども達

家族の一員として責任を負いながら生活する子ども達

紛争からの避難後、ほとんどの子ども達が教育を受ける機会を失っています。シリア人の子どもを受け入れているトルコの公立学校もありますが、対象地では公立学校に編入するために必要なトルコでのIDを取得しているシリア人の子どもは僅かです。

村々ではトルコ人の子どもでさえ登校するには交通の便が必要ですが、多くのシリア人家族は貧困から交通費を支払えません。またトルコ語で全ての授業がなされるため、アラビア語を母国語とするシリア人の子どもにとっては適応が難しく、ドロップアウトする子どももいます。トルコ人の子どもとのトラブルも少なくないため、シリア人の保護者が子どもを学校へ送ることを渋ることも多くあります。文化や民族の違いや理解の不足から、シリア人の子どもとトルコ人の子どもが互いを尊重できる関係になるには、長い時間がかかります。

対象地であるシャンルウルファ県の村々では、約80%のシリア人の子ども達が就学機会を失っています。生活の困窮により、保護者にとっても子どもの教育を最優先としにくい傾向がみられます。

→ シリア難民の子ども達の未来と笑顔をつくるために②へ続く

(シャンルウルファ事務所 シバ、マフムード、高田)

※この事業はジャパン・プラットフォームの助成と、皆さまからのご寄付で実施しています。