PARCIC

シリア難民への教育支援事業

アルサール市での教育活動(夏休み編)

パルシックは、2020年10月より、バアルベック・ヘルメール県アルサール市で、シリア難民の小学生500人に公教育の支援を行っています。

2021年6月末に2020年度の学年末を迎え、授業は終了しました。しかし、教科書の内容は一通り終えることができても、去年からの新型コロナウィルス感染拡大の影響で授業がオンラインになっていたことから、生徒の理解度はかなり低い状況になっていました。

そこでパルシックでは7月より、サマープログラムとして補習授業を行いました。7月から9月末までは夏休みなので、子どもたちは夏休み中の勉強を嫌がるかと思いましたが、シリア人の子どもたちは、夏休みといっても特別にすることもなく、それより学校に行くと友達に会え、何より難民キャンプより広いスペースの運動場があるので、どの子も学校を楽しみにしていました。

授業の様子

2020年度は、新型コロナウィルス感染拡大のリスクを減少する措置としてオンラインによる授業を行ってきましたが、2人以上の子どもが学校に通っている世帯では、携帯が一つしかないと、子どもたちのうちどちらかしか授業に参加できないということも多くありました。

パルシックでは、このような子どもたちに、教材を印刷して配布したり、授業を録画したりして、後で視聴できるようにました。こうした配慮が親にも伝わったのか、モニタリングで訪れた際には、お母さんも一緒にオンライン授業に参加したり、録画された授業をまずお母さんが学習してから子どもに教えたりしている様子が分かりました。

子どもたちの住むテントをモニタリングで訪問

教育には保護者のサポートもとても重要です。今までのパルシックのレバノンでの教育活動においても、どうすれば学校や教育センターだけでなく、保護者が家での教育に関わってもらえるかいつも悩んでいました。もともとシリア人は教育への関心が高く、ほぼ100%が中学までの教育を終了し、高校も約70%は終了しています。なので、現在パルシックが実施している初等教育の学習内容は、親でも理解できるのです。

夏休みの補習授業では、暑い中ずっと集中して勉強するのは大変なので、一日4時間の授業のうち2時間を主要教科の勉強、残りの2時間はレクリエーション活動を中心とした授業構成にしました。シリア難民の子どもたちは、テントに絵や文房具がないため、お絵描きや工作などができず、また物語の読み聞かせなどもテント生活では難しい状況があります。そのため、普段の生活の中でレバノン人の子どもと比べると、レクリエーションの時間が少ないのです。

レクリエーション活動で風車を作った子どもたち

レクリエーション活動では、校庭でのサッカーやバスケットボールなどの運動も取り入れました。キャンプでは、のびのびとボール遊びをする場所がなく、子どもたちのエネルギーがあり余っているという声を親からもよく聞いていたためです。校庭の地面が少し傾いていたので、安全にボール遊びができるよう、補習授業開始前に地面を平らにする補修工事なども行いました。

校庭で遊ぶ子ども

校庭の補修工事

現在レバノンの経済はとても悪い状態で、全ての物価が上昇しています。今、新学年に向けて準備をしていますが、特に教材やスクールバスのガソリンの値段の上昇が、どう事業に影響するのか心配です。パルシックが支援しているアルサールの学校だけでなく、レバノン全土で全ての公私立の学校が、物価上昇も考慮した予算をどれだけ確保できるのか、固唾をのんで見守っています。

パルシックでも、教育支援を行っている他の団体や国連機関、教育省から情報収集を行い、一人でも多くのシリア人の子どもに教育機会が与えられるよう頑張ります。

帰りのスクールバスを待つ子ども

(レバノン事務所 大野木雄樹)

*この事業はジャパン・プラットフォームの助成と皆さまのご寄付で実施しています。

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