PARCIC

シリア難民への教育支援事業

アルサール市での教育活動

パルシックは、2020年10月より、レバノンでの教育支援活動をベカー県バル・エリヤス市からバアルベック・ヘルメール県アルサール市に移し、シリア難民の小学生の子ども500人に公教育の支援を行っています。

レバノンでは、新型コロナウィルス感染拡大を受けて、教育省が授業のオンライン化を指示したため、2021年1月から全日オンラインで授業を行っていました。しかし、アルサール市のシリア人の子どもたちの95%はテント暮らしで、オンラインでの授業といってもインターネットが頻繁に途切れ、さらにはノートパソコンを持っていないため、授業を受けるのにスマホの小さなスクリーンをずっと見ているという子どもがほとんどの状況です。

先生は同じアルサール市に住むシリア人を雇い、ほぼ全員が子どもたちと同じようにテント暮らしをしているため、オンライン授業を受けることがどれほど大変かよく分かっています。そのため、教育機会のなかった子どもたちがオンライン授業で少しでも多くのことを学べるように、先生たちは授業に歌やクイズ等を取り入れて工夫を凝らし、質の高い授業になるよう努力してきました。

また、そもそもインターネットに繋がる機器を持っていない世帯も80世帯近くありました。機器を持っていないためにオンライン授業に参加できない子どもたちには、教材を印刷して配布し、回収・添削することで対応してきました。

対面授業が再開されるまでは教材とオンラインでの授業が行われていた。

教材を渡された女の子

世界中でオンライン授業に苦労している子どもたちがいますが、アルサール市のシリア人の子どもたちを定期的にテントまで訪問してモニタリングを行った結果、テントの中には机も椅子もなく、勉強する環境が整っていないという問題もあることが分かりました。子どもたちは、床にマットレスを敷いて座り、床にノートを置いて字を書いている状況で、複数の保護者から「せめて低い机だけでもあれば」との声を聞きました。子どもたちも、オンライン授業になって学校に行けず、「ずっと狭いテントで生活しています。早く学校に行きたいです。」と皆が口をそろえて言っていました。

子どもの住むテントにモニタリングで訪問

学校へはスクールバスで通う子どもたち

2021年5月、新型コロナウィルスの新規感染者数が大きく減った状態が続いたため、遂にオンラインと対面式の授業を交互に行うことが教育相より発表され、ようやく子どもたちが学校に登校することができるようになりました。子どもたちは、学校で友達に会うのを楽しみに待っていた様子で、学校初日は新品の服で登校している子どもを多く見かけました。 レバノンの学校では、6月下旬で2020年度が終わります。しかし、オンライン授業でカバーできなかった箇所が多くあるため、パルシックが支援している学校では7月も補習とレクリエーション活動を混ぜながら活動をしていく予定です。

子どもたちの健康状況を学校の入り口で先生たちが毎日確認している。

朝礼時に並ぶ子どもたち

アリとキリギリスの話を絵で描いた授業での作品の一つ

授業の様子

校庭の様子

校庭で遊ぶ子どもたち

(レバノン事務所 大野木雄樹)

*この事業はジャパン・プラットフォームの助成と、みなさまからのご寄付で実施しています。

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