10月27日(金)に、『トルコ・シリア地震活動報告会』を開催しました。
報告会では、発災直後に現地へ派遣され活動を行ってきたトルコ駐在の大野木が報告を行いました。
久しぶりの対面のみによる報告会ということで、参加者の方々と直接議論を交えながら会が進行しました。
2023年2月6日未明に、トルコ南部のシリア国境近くでM7.8の地震が発生しました。被災者数約910万人、死亡者数約5万人、また多くの建物の倒壊や破損が確認されています。
地震による被害の影響で支援を届けることが困難であり、被災者は冬季の寒さに耐えながらの避難生活を余儀なくされました。
トルコでは、倒壊した建物が撤去され、跡地にテントやプレハブが設置されました。プレハブに住むことを希望したほとんどの人はプレハブに住むことができています。プレハブ内でお店を開くなど、小規模ながらも徐々に日常生活に戻ることができるよう、復興が進められています。
同時に、アパートやビレッジハウスの建設が急ピッチで行われていますが、十分な戸数を用意するにはまだ時間を要すると考えられます。
子どもたちや障がい者、トルコで生活するシリア人、都市部から離れた地域に住む人びとなどは支援を受けづらい状態にあります。
トルコに住むシリア人は越県の際に政府に許可を得る必要があります。しかし、地震発生後、避難のために他県へ移動したシリア人の中には、地震の影響で許可を得られなかった人たちがいます。許可をとらずに移動したシリア人は、政府に知られるのを恐れて政府からの支援を受けられずにいます。そのため、事情があって支援を受けられない世帯に物資を届けました。
また、避難先として住む人が多いプレハブですが、大量生産されたものであるため、障がいのある方などのニーズに応じたプレハブをつくることは難しく、不便な生活を送っている方がいます。
被害の有無、程度に関わらず、村全員を対象に物資を届けました。家が倒壊していない世帯も、倒壊した世帯に台所やシャワーなどを貸すなど、互いに支えあって生活をしています。村の中で区別をしないことで、地震で被害を受けたコミュニティ内で軋轢を生まず、協力して生活していけるようにしています。
家畜の飼育によって生計を立てている世帯では、地震により家畜を飼育する小屋が破損し、寒さと免疫力の低下により、家畜が冬を越せない恐れがでてきています。そのため、冬を迎える前に家畜を売り、廃業する世帯が増えることを懸念しています。パルシックは地元の自治体と連携をとり、家畜が生活できるような大きめのテントを届けられるように準備を進めています。
また、トルコではりんごの生産が盛んで、国外へ多く輸出していますが、震災後にりんごの手入れができず、今年はほとんど出荷することができない状態となっています。りんご生産で有名な「りんご村」は、村全体が大きな被害を受けているため、今後村ごと近隣のビレッジハウスへ移動し、りんごの生産を終えることになる予定です。
シリアでは内戦が続き人びとは疲弊している中で、今回の地震が発生しました。
パルシックはシリアの提携団体を通して、現地の状況や必要な物資などの情報を確認し、物資の支援や学校・家の修復などを行ってきました。
シリアではオリーブの生産が盛んであり、ヨーロッパ諸国に多く輸出しています。しかし、今回の地震の影響に加え、ヨーロッパの生産量が半減したことで、オリーブの国内の市場価格が上がっています。これを受けて、オリーブの収穫を行う人手を確保し、収穫の支援を行っています。市民がオリーブを買いづらい状況にありますが、オリーブの文化を守っていく必要があります。
また、地震前からコレラが蔓延しており、主に多くの子どもが感染しています。しかし、地震の影響で給水施設の消毒用のポンプが故障してしまいました。そのため、ポンプの交換など衛生環境の改善のために支援を行いました。
トルコ・シリア地震からすでに9か月経過しました。様々な理由で支援を受けられない、または支援が届きにくい人びとがいます。しかし、支援が難しいから諦めるのではなく、支援が必要なすべての人に届ける必要性を強く感じました。
日本国内ではこの地震に対する関心は薄まってきているように感じます。トルコ・シリアは日本から距離が遠い国々であり、実際に直接支援を届けることは難しいですが、現地の状況を伝えるニュースを確認するなど、現地の人びとの状況に関心を示すこと自体が支援や報道をより促進することに繋がると考えます。
(東京事務所インターン 藤川愛永)