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生活

ムライティブの街並みの変化

今年3月にムライティブで新しいプロジェクトが始まってから、半年が経ちました。北部州の中でも都会のジャフナに比べ、スーパーマーケットも小規模なものが1軒あるのみ、商店街と呼べる通りはほんの数十メートルほど、と、のどかなムライティブですが、それでもこの半年の間に、街並みに着実な変化が見られます。

ムライティブタウンで唯一のスーパーマーケット

ムライティブタウンで唯一のスーパーマーケット

 一番大きな変化は、道路が改良されていることです。一年前までは、車で4時間ほどかかったジャフナ-ムライティブ間の移動は、現在、一部を残してほぼすべての区間の舗装工事が終わり、約2時間半で行き来できるようになりました。同じく、ムライティブタウンから、パルシックの事業地への道の変化も目覚ましいものがあります。私が着任した当初は、コクトルワイ村に入ってから、カルナドゥカーニ村、コクライ村へと移動する幹線道路のほぼ全域が工事中で、砂や石を運ぶ大型トラック、コンクリート車、舗装車などが道をふさぎ、村を訪問する際はほぼ毎回、どこかで必ず待たされていました。それが先月、全区間の舗装が完了し、アスファルト道路が完成、移動時間が短くなっただけではなく、景色もがらりと変わり、以前何度か訪ねたことがある家も、最初気付かずに通り過ぎるほど。現在は、側溝の工事や、横断歩道脇の柵の取り付けなどが進んでいます。

工事中だった頃のコクライ村の道路

工事中だった頃のコクライ村の道路

この道路工事、帰還した人々の仕事の機会にもなっており、多くの場合、数ヶ月単位の契約で、1日4~5時間働くと約500ルピーの収入になります。まだ村に戻ってきて1、2年と日が浅く、農地を失った人、内戦中はLTTEに所属していた人、夫を戦争で亡くした女性など、すぐに定収入を得ることが難しい人々にとっては数少ない収入源の一つです。工事現場の清掃など比較的容易な作業には女性も参加しており、ヘルメットをかぶった女性たちが並んで道路を片付けている姿を、工事中は頻繁に見かけました。ただし、必要とされる人手や期間が限られているため、誰でも希望すれば参加できるわけではなく、継続的な収入にもならないので、人々は他の収入源にも頼らざるを得ません。

舗装されたアスファルト道に取り付けられた立派な柵

舗装されたアスファルト道には、通行量に比べて立派すぎると思える柵も取り付けられています。

 ムライティブタウンの街中にも変化は見られます。9月上旬、街の中心部にアメリカの援助機関USAIDの支援を受けた新しい市場が完成しました。それまでは、木材とトタン屋根、ビニールシートで囲った簡易的な建物だった市場が、二階建て部分を含む真新しい建物に生まれ変わり、街の中でもひときわ人目を引いています。オープンしたての市場は活気にあふれており、建物が新しくなってから、取り扱われる野菜の量も増えたように感じました。現在、ムライティブ県次官事務所(県庁)も新築工事をしており、1年以内に4階建ての新しいオフィスが完成する予定です。

新しくなったムライティブタウンの市場

新しくなったムライティブタウンの市場

ムライティブ県内ではありませんが、9月14日には、内戦によって中断していたコロンボとジャフナを結ぶ鉄道工事も、北部の中心都市のひとつキリノッチまでの路線が開通し、残すところ、キリノッチ-ジャフナ間の約65kmとわずかになりました。年内にはジャフナタウンのすぐ手前まで線路が敷かれる予定といわれており、工事が日々進んでいる様子が、近くを通ると見てとれます。

新しくできたキリノッチ駅

新しくできたキリノッチ駅

この間、急速に変化が進んだ理由には、8月末の国連人権高等弁務官、N・ピレイ氏のスリランカ訪問や、9月末の州議会選挙の開催を前に、政府が北部の復興を強調したかったことが考えられますが、これらの変化は、確実に人々の生活にも影響を与えています。交通網が便利になることは生産物の販路を拡大するだけでなく、北部に来る観光客の増加にもつながっています。

その一方で、幹線道路を離れ村の中に一歩入れば、舗装されていないでこぼこ道の先に、まだヤシの葉とトタン板で作った家に住み、電気も水道も来ていない、仕事も十分にない、という暮らしをしている人たちがたくさんおり、人、物の移動が増加したことによる恩恵は、まだ一部の人のところにしか届いていないという印象を受けます。道路建設をはじめとした北部各地で進む開発や投資の中心を担っているのは、南部の人々であることが多い、という現実もあります。20年以上に及ぶ内戦の被害を直接被った人々が、この地域の発展の中心的な担い手になるには時間がかかるのは事実かもしれません。ただ、一刻も早く人々が自らの手で村の発展を担っていかれるようになるために、今必要とされている支援は何なのか、考えさせられる日々が続きます。

(ムライティブ事務所 伊藤文)