PARCIC

ジャフナ県干物事業

南部ウェリガマでのかつお節づくりを視察(後編)

女性たちとの会議、女性たちの意見

乾燥魚の販売価格は、コロンボのほうがジャフナよりも高いが、輸送費や現金の受け取りまでの時間を考えると、コロンボに商品を送るよりもジャフナで売るほうがいい。スーパーマーケットでの販売は魅力的であるが、普通に売る分にはジャフナ内で売るほうが利益があがる。

パルシックが以前に計画していたが、コスト面の問題、なかなか手続きが進行しないことから、頓挫していたジャフナで店を開く案に女性たちも同意する。パルシック内では一度あきらめようと話し合った案であるが、再度検討を開始することにする。

また、今回南部で見せてもらった活動のうち、かつお節作り用のオーブン、ジャーディ作り、マット作りへの関心が高かった。かつお節作りは、ひとまずは天日干しで試してみることにする。ジャーディは、カライナガルのリーダーが興味をもち、南部からの観光客向けに試しに少量を作ってみることにする。マット作りは雨期にもできる作業であること、ジャフナでも需要があるのに同様の商品があまり出回っていないことから、作ってみることにする。Sobakanthaの女性たちが次回ジャフナを訪問する際に、マット作りを教えられる女性を連れて来てもらい、作り方の研修を受ける。

女性たちの感想

参加した女性たち全員から「今回こうして視察旅行に参加できて本当によかった。パルシックがすべてアレンジしてくれたことに心から感謝する。おかげで本当にリラックスした時間が過ごせた。ウェリガマの女性たちの活動を見られたことは、今後の活動にとって役に立つものである。南部の女性たちが自分たちで稼いで、自分たちで家をきれいにしていったことに感銘を受けた。この旅行のことは一生忘れない。」と各々に大変な感謝の言葉が述べられた。

中でも、トゥンプライから参加していた女性グループの一人は話している途中で感極まって泣き出し、次のように話した。「この旅行中は心底リラックスして過ごすことができた。今回の旅行は村を離れる初めてのチャンスだった。今までは北部の生活しか知らなかった。南部の女性たちが自分たちで生活を改善していっている姿に感銘を受けた。自分たちも夫に頼るだけではなく自分たちで稼いで生活を改善していきたい。」

この女性は、前夜パルシックの女性スタッフと話をしていたときに、これまでのつらかった結婚生活を告白し、泣き出したとのこと。16歳で結婚して以来、夫からDVをずっと受けてきた。夫はアルコール中毒者で、酒を飲んで帰ってきては彼女に手をあげているとのこと。この旅行も夫には反対されており参加を迷っていたが、当日の朝に決意してできたという。

日ごろは元気にたくましく振舞っており、パルシックスタッフも彼女の家庭内での不幸を想像だにしていなかった。ジャフナの女性たちの様々な不幸は家庭の中、あるいは小さなコミュニティ内だけに隠されており、なかなか表面化しにくい。生まれ育った家庭が貧しくダウリ(婚資金)が十分に払えなかったために結婚後に夫に捨てられたという話、DV被害など、家族や結婚にまつわる女性たちの不幸な話を耳にすることがよくある。

他方、ウドゥトゥライから参加した若い寡婦世帯の女性は、今回の旅行への感謝の言葉とともに、パルシックの乾燥魚事業で生まれて初めて十分な収入を得ることができ、先日初めて4歳になる一人息子の誕生日を祝うことができたという喜びと感謝を報告した。彼女は息子の誕生日前にしっかり働き1万ルピー以上の収入を得ていた。このことは彼女の自信にもつながり、以前よりも行動的でたくましくなったように見える。

トゥンプライではいまだウドゥトゥライのように女性たちの収入が増えておらず、たとえ寡婦世帯ではなく夫がいたとしても、夫の下で苦労して生きている女性も多い。事業を軌道に乗せることで、女性たちの収入確保につなげたい。


全員で集合写真


途中のゴールでも写真撮影

視察を終えて

参加した全員が本当に今回の旅行を楽しんでいるようであり、とてもよい機会であったと思う。加えて、女性たちとの話し合い、パルシックスタッフの反応から、全員が様々なアイデアを得るとともに、以前よりも前向きな気持ちをもって帰途に着いたと思われ、今回の旅行がとても意義のあるものであったと実感した。

南部の人が北部のことをほとんど知らずにジャフナを観光旅行で訪れるように、北部の人たちも南部のことを知る機会がなかった。こうした小さな積み重ねが双方の相互理解にもつながっていくように思われた。Sobakanthaも今回のパルシックの訪問が相互理解、平和構築の一歩につながることを期待していたとのことである。今後ともパルシックスタッフ、乾燥魚事業の女性とともに、ジャフナを離れて他の地域を訪問する機会を持ちたいと思う。ジャフナだけにいると、パルシックスタッフも女性たちもジャフナでの行動様式、価値観の縛りが強く、そこから違う視点で物を見ることが難しい。乾燥魚事業がより発展するよう、南北の相互理解への小さな一歩となるよう、次の機会も探したい。

(パルシック 西森光子)