パルシックは2016年度より循環型農業推進の一環として、パレスチナ北部ナブルス県ジャマイン町で生ごみを再利用した有機堆肥づくりに取り組んでいます。
2016年よりジャマイン町の2校の中学校(女子中学校、男子中学校)で有志の生徒たちと環境クラブを立ち上げ、メンバーとともに学校近隣の清掃活動やペットボトルのリサイクル、3Rのワークショップなど、地域の環境問題を様々な角度から考え、取り組んできました。活動2年目に入った今年は、女子校の庭に設置した簡易堆肥舎で生ゴミを利用した堆肥づくりに挑戦しています。
生ゴミを利用した堆肥づくりで重要なポイントは、毎日出る生ゴミを堆肥に使用するまで腐らせずに保管することです。家庭で生ゴミを保管するとき、腐敗を防ぐために私たちが加えているのが「床材」と呼ばれるもの。一見すると、ただの土のようにも見えるこの床材は、地域で産出されるオリーブから油を絞ったあとに残る搾りかすや鶏などの家畜のフン、落ち葉など現地で調達可能な有機ゴミを混ぜ合わせて作っています。この床材に生ゴミをまぜて保管しておくことで生ゴミは腐敗せず、むしろ発酵が進みます。
そういうわけで、堆肥作りの手始めに、まずは床材の準備から。
メンバーたちは、校庭や自分たちの家、近隣農家さん、オリーブの搾油所などから必要な材料をかき集め、農業専門家サーデクに指導を受けながら床材づくりに取り組みました。比重の軽いものから重ねていくので、まずは十分に乾かしたオリーブの搾りかすを地面に広げます。次に工程から集めた落ち葉をまんべんなく広げ、その上にサーデクが持ってきてくれた木くず、土、鶏糞を重ねていき、最後に鍬やシャベルで混ぜ合わせていきます。なかなかの力仕事ながら「まるでピザを作ってるみたい!白い木くずがチーズで、鶏糞がザアタル(パレスチナ・タイム)で…」とメンバーははしゃぎながらかわるがわる作業を進めていました。その後、水分量をチェックし(適切な水分量は40%くらい)、冬の冷たい雨に濡れないよう簡易堆肥舎の屋根の下へ積み上げました。
いい床材づくりには、好気性微生物[1]による発酵の行程が不可欠です。そのため、2日に一度床材を混ぜ合わせる“切り返し”の作業を行い、空気を内部に送りこみます。順調に発酵が進めば、そのサインとして床材の温度は2日後くらいには60~70℃まで上昇するといいます。メンバーはさっそく役割分担を決め、週2日、床材の温度を計測、切り返し作業を行いました。仕込みから2日後、発酵活動が始まった床材の温度は、開始日に測った20℃から60℃近くにまで上昇し、メンバーたちも実際の変化にはびっくり。最初はハエが飛び、鶏糞などからくる悪臭がしていた床材に「本当に上手くいっているのかな」と心配するメンバーもいましたが、仕込みから約2週間もたつと、ハエはすっかり姿を消し、かすかにレモンのような爽やかなにおいのする床材が完成しました。
今後、床材は学校の生ごみ回収ボックス用以外にも、学校近隣の家庭に配布され、生ゴミの保管につかわれます。その後、回収した生ゴミと床材をつかって、堆肥づくりを開始します。できた堆肥は校庭の菜園に利用し、花やハーブを育てるのに役立てていく予定です。
[1] 空気中の酸素を取り入れることによって、自らの酵素を用いて有機物を分解する微生物のこと。
※この事業は地球環境基金の助成と皆さまからのご寄付で実施しています。
(パレスチナ事務所 関口)