PARCIC

ガザ人道支援

ガザの貧困世帯1,200世帯に食糧バスケットを配布

ラマダン(断食月)の始まった7月16日、パルシックはガザ地区で昨年の戦争により被災した貧困世帯1,200世帯を対象に食糧バスケットの配布を開始しました。この事業は昨年より継続しているFrom Poor Farmers to Poor Families(貧しい農家から貧しい家庭へ)プロジェクトの一環で、イスラエルの攻撃によって被災した小規模農家や女性経営の生協から新鮮な野菜やハーブ、オリーブオイル、卵、鶏などを調達し、貧しい家庭へ配布しています 。

今回の対象地域は、ガザ地区中部デル・アルバラ地区、ザワイダ及びサワルハエリア。対象とする1,200世帯はいずれも社会福祉省に貧困世帯として登録されており、国連や社会福祉省から定期的に米や砂糖、パスタ、小麦など炭水化物を中心とした必要最低限の基礎食品の配給を受けています。それでも生活は苦しく、特に昨年の攻撃以来値段の高騰している生鮮食品を買う経済的な余裕はありません。食生活は非常に偏り、鉄分やビタミンは不足しがちになっています。パルシックでは、生鮮食品を中心に、家族1か月分の消費をカバーする食糧バスケットを配布し、貧困世帯の食糧状況改善に努めています。

配布する食糧バスケットには、トマト8kg、キュウリ3kg、ナス3kg、スコッシュ(ウリ科の野菜)2kg、ピーマン1kg、モロヘイヤ2kg、ドゥッカスパイス1kg、卵1箱、鶏3kg、ザアタルkgなどが含まれます。今回は夏期の配布ですが、ガザの電気供給はいまだに不安定で、短い日は1日4時間ほどしかありません。こうした状況では野菜などを家に長期保存することは難しいため、1か月分の食糧を3回に分けて3週かけて配布することにしました。食糧バスケットの配布日には、いつも、30分前から受け取りに来た人々の長蛇の列ができています。

PL_20150831_a

PL_20150831_b

アマル・シャカラーン(Amal Shaqalan)さんの話

「いつでもあらゆる野菜が不足して、困っていました」

そう呟いたアマルさんは昨年夏の攻撃の際、避難することなく家にとどまっていた人の一人です。大人11人に孫26人という大家族を受け入れられるような避難場所はなく「ガザのどこにいても危険だということが変わらないのであれば、見知らぬところで死ぬよりは家で死にたい」と残ることを決めました。イスラエルによる空爆はアマルさんたちの住む地区にもやってきて、孫たちは恐怖に震えていたといいます。家族はみな空腹を抱えていましたが、それでも危険すぎて誰一人外に食糧を買いに行けない状態が続きました。

ようやく停戦が合意されても、自宅は被災し、一部損壊。食料品の値段は跳ね上がり、購入できる野菜は限られていました。

「鶏肉や牛肉、魚なんかを買う余裕はありません。2か月に一回食べられるかどうか…。何か買うときはいつも子どもたちに最低限必要なジャガイモとトマトばかり買っていました」とアマルさん。「今回の支援で受け取ったバスケットの食品の種類がとても多彩で本当に助かりました。特に卵、ザアタル、トマトとドゥッカスパイスのおかげで、子どもたちがいつもお腹を空かせずにいられました。一日中うれしそうに食べていましたよ。もちろん私たちもいただきました」。

パルシックスタッフとアマルさんの食べ物の話を聞きつけて子どもたちが集まってくると、アマルさんは先週配布されたばかりの食糧バスケットの野菜を早速使って料理の腕を振るっていました。

PL_20150831_c

PL_20150831_e

スレイマン・ラマダン・アブラムン(Slieman Ramadan Abo Lamoon)さんの話

スレイマンさんは64歳。8人の息子と3人の孫息子を養う立場です。しかし20年近く前に失業し、それ以来職がありません。2014年の攻撃の際には、避難を諦めて家に留まりましたが、その決断を今でも後悔しています。「攻撃のさなか怖い思いをした孫息子たちは、深刻な心の傷を負ってしまいました。いまでも夜尿症などのトラウマ症状に苦しんでいます」。

一家は社会福祉省から2か月に一回1,800シェケル(約5万9000円相当)の生活補助を受けていますが、家族が多いスレイマンさんにはとても十分とはいえません。「パルシックの食糧配布はタイミングが良かったと思います」とスレイマンさん。負担の大きかった食費が350シェケル(約1万1500円)も浮いたといいます。

「卵やオリーブオイル、さまざまな生鮮食品があってとても健康的です。まだナスとトマト、ザアタルは残っていますが、家族みんなが好きな食べ物だから…。ジャガイモとタマネギが配布に含まれていなかったので少しだけ買い足しました。妻が今回配布されたタマゴとジャガイモで作った料理は、本当においしかったんですよ。私たちは常に支援に頼って生活せざるを得ません。缶詰の肉や魚、パスタやトマトソース、缶詰の豆も支援に頼っています。でも生鮮食品を配布されたのはこれが初めてです。日本に感謝しています」。

PL_20150831_f

(ガザ事務所 ターリク)