PARCIC

ガザ人道支援

戦争により被災した寡婦21世帯への支援を開始

パルシックは、昨年9月よりガザ地区の戦争で被災した貧しい小規模農家100世帯に加え、寡婦21世帯への生活再建支援を開始しました。

度重なる戦争とイスラエルによる経済封鎖で食料が慢性的に不足しているガザ地区では、庭の空いたスペースを利用して鶏やウサギ、ハトを飼育していることも多く、自家消費で余ったものを販売に回して年間10万円ほど利益を得ている世帯もあります[1]。しかし、2014年夏のイスラエルの攻撃では、多大な人的被害だけでなく、家畜にも甚大な被害を出しました。国際連合食糧農業機関(FAO)は、ヤギやヒツジは2010年に比べ20%減少し、鶏やハトなどの家禽も攻撃前の50%以上が、直接の攻撃によって、あるいは人びとが避難中に世話できなかったことによって失われたと見積もっています[2]

今回の攻撃で35,000人近くの女性たちが家を失って避難民となり、そのうち791人の女性がこの攻撃で夫を失いました。現在、ガザ地区全世帯の10%は母子家庭であると言われています。2007年から現在まで続くイスラエルによる厳しい経済封鎖で物資は限られ、野菜などの物価も高騰する中、働き手を失った寡婦世帯の生活は苦しくなる一方です。パルシックでは、3月よりニーズ調査を開始し、7名以上の家族を抱え、かつ家族に障がいを持つ人がいる、デルアルバラ地区の貧困寡婦世帯21世帯を支援対象として選定しました。それらの世帯はいずれも以前にハトやウサギを飼育していた経験がありますが、2014年夏以降、平均して650NIS(= 約2万円)[3]程度あった収入は80%も減少しました。収入が全くなくなったという世帯も少なくありません。世帯当たりの被害総額は8,000NIS(= 約24万円)に上ります。パルシックではこうした世帯に対して、自宅で飼育ができるウサギとハトを提供して一部を自家消費に回すとともに、マーケティングのトレーニングを通して販売スキルを身につけてもらい、数を増やした後の余剰分を市場で販売できるようにすることを計画しています。

3月末、女性たちを招いて事業説明会を行い、4月8日、9日には、基本的な飼育方法のおさらいと、ウサギやハトの病気に対する対象法などの専門知識を学ぶトレーニングを実施しました。トレーニング終了後、参加した女性全員が「自信がついた」「一刻も早くウサギやハトを得て販売できるようになりたい」、と熱意を見せていました。パルシックでは、4月中旬から下旬にかけて各世帯に飼育ゲージの設置を進め、ウサギとハトを順次配布していく予定です。

[1] ウサギやハトはラマッラーのマーケットでも時折見かけますが、西岸地域よりはガザ地区で食用にされています。特に、ウサギやハトは数を増やすのが比較的簡単で、ハトは50日、ウサギは90日で子どもが生まれるため、食糧不足のガザでは重宝されます。

[2] 参考:ALJAZEERA Gaza farmers struggle in war aftermath – Israel’s war on Gaza has taken its toll on all economic sectors, with the agriculture industry hit especially hard.

[3] New Israel Sheqel。1イスラエル新シェケル = 31.0938日本円(2015年5月13日現在)

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事業説明会を真剣に聞く女性たち

 

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獣医によるウサギとハトの基本的な世話の仕方のトレーニング


(アンマン事務所 大野木)

※この事業はジャパン・プラットフォームの助成によって行っています。
https://www.japanplatform.org/programs/gaza2014/