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パレスチナ・ラマダンリポート(ガザ事務所 サハル)

ラマダン・カリーム。ラマッラー事務所の盛田です。

中東の各国同様、パレスチナでは6月18日からラマダン(断食月)が始まりました。ムスリムは約1か月間、日の出から日の入りまで飲食を断ちます。パルシックの現地スタッフももちろん日中は水一滴飲まず、初日は少し辛そうでしたが、それでも懸命に日々の業務に取り組んでいます。今回は、そんなパレスチナ事業のスタッフ、ガザ事務所のサハル(Sahar)とラマッラー事務所のヤラ(Yara)がパレスチナの断食についてリポートします。

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サハルは、しっかり者の働くお母さん。昨年のイスラエルによるガザ攻撃の直後から、フィールドを駆け回りながらパルシックのガザ支援に尽力してくれています。

ガザ事務所のサハルからのレポート

「ラマダン・モバラク[1]
「ラマダン・カリーム[2]

これらはラマダンのもっとも典型的な挨拶で、どこに行っても出会いがしらにこれらの言葉が飛び交います。ムスリムにとってラマダンは最も大切な時期であり、赦しと慈悲の月でもあります。特にラマダン・ザカート(Ramadan Zakāt)は重要な習慣の一つであり、しばしば「救貧税」と訳されています。イスラムの五行の一つであり、一定の金額を貧困者に喜捨することが求められる義務的な習慣です。

ラマダンは断食の月。人びとは日の出(fajr)から日没(maghrib)まで毎日飲食や喫煙、性行為などを断ち、誤った言動(暴言を吐く、悪口を言う、ののしる、嘘をつくなど)や喧嘩など、断食で積んだ徳を損ねるような罪深い行いを慎まなければなりません。

ラマダン初日は、日の出の祈りで始まります。午前2時50分から1時間続く祈りの時間は「ソホール」と呼ばれ、午前3時50分に祈りが終わると同時に人びとは飲食を断ちます。一般的に、男性はモスクに行って聖典コーランを読み、夜明けとともに一度帰宅して仕事の前にひと眠りします。他方女性は家で日の出の祈りを捧げ、軽く眠ってから朝の仕事に取り掛かります。

ラマダン中は、数ある家事の中でも料理は午後に後回し。朝食が終わると、次の食事は日没後の午後7時50分なので、女性たちは夕方4時頃ようやく夕食の支度を始めます。男性たちはたいてい夕方5時の祈りのためにモスクへ赴き、空いた時間でコーランを読んで過ごします。

もちろん、子どもたちには子どもたちなりのラマダンの祝い方があります。ラマダンが始まる前日、子どもたちは「ハロー、ハロー、ラマダン・カリーム、ハロー」と口ずさみながら紙やプラスチックでできたファヌース(Fanos)と呼ばれる灯篭で街路中を飾りつけ。ラマダン期間も日没後の夕食「イフタール」の時間帯に自前の灯篭を持ち、歌いながら街を練り歩きます。お母さんたちも負けじと電飾で家を飾り付けします。輝く星と三日月が元気と子どもたちと過ごす喜びを象徴しています。

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ラマダンの装飾ファヌース

ラマダンは分け与える月(Kareem)として有名です。人びとは親せきを互いに訪問し、食べ物を分け合います。ジャムやチーズ、スイーツ(halawa)、デーツ(tamr)、ヨーグルト、乾燥イチジクやアンズ(gamar din)[3]などソホールに食べる物であることが多いです。

16時間飲食をしない断食を実践するのは決して容易ではありませんが、ムスリムは、断食が体から不純物を取り除くと同時に、恵まれない人びとの感情を常に喚起してくれると考えています。またラマダンの期間に断食によって徳を積むと、報い(thawab)はより増すと信じられています。

断食は成人したムスリムにとっては義務(fardh)とみなされていますが、病人や旅行中の人、高齢者や妊婦、授乳中の女性、糖尿病患者、生理中の女性は例外となります。

イフタール(夕食)の準備は女性の仕事。女性たちはこぞって午後4時ごろから準備に取り掛かります。様々な種類の料理を準備しますが、大抵の場合前菜にスープを準備するのが定番です。一日の断食を終えるにあたって、まず初めに口にするのはデーツ3粒。その後、スープで胃腸を動かし、メインディッシュへと進みます。伝統的な料理はファッタ(fatta)、ムサッカン(msakhan)、マクルーベ(maqluba)、 ゲドラ(gedra)[4]などで、クッバ(kubba)やサムブーサック(sambosek)、スープやサラダ、ピクルスなどを前菜として付け合わせます。そのほか、ラマダンの時期だけ作るガターィエフ(gatayef)[5]、クナーファ(knafa)、バクラワ(baklawa)のような特別なデザート、飲み物には水、ジュースやお茶、アラブコーヒーを用意します。

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特設ショップで売られているラマダンのお菓子アワーメ

イフタールの後、人びとはタラウィーハの祈りを待ちます。これはラマダンの夜のみ行われる祈りで、義務ではないものの多くのムスリムが実践しています。その後、親せきや隣人を訪ね、おしゃべりに花を咲かせているうちに夜が更けていきます。

なお、7月6日には、ガザ中部デル・アルバラのレストランでパルシック主催のイフタールを行いました。ガザのスタッフや食糧配布支援で雇用している労働者30名を招待して、断食明けの夕食を共にし、労をねぎらい合いました。普段の活動とは違い、皆リラックスした様子で楽しいひと時を過ごしていました。

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パルシック主催のイフタール

[1] 聖なるラマダン、の意味。
[2] よいことがたくさんあなたに起こりますように、の意味。カマルディンともいう。ガマルディンはガザの方言。
[3] 小さく切って水に溶かし、ジュースにしたものがラマダンの定番ドリンク。
[4] ケドラとも。ゲドラはガザの方言。
[5] カターィエフのガザ方言。

(ガザ事務所 サハル)

1日の断食明けの食事(イフタール)の様子、停戦から1年目のガザ
(引用:Pkdhamal.com)

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