PARCIC

ミャンマー緊急支援

ミャンマー:ご寄付で実施した事業のご報告

いつも温かいご支援をありがとうございます。

2021年10月に寄付キャンペーンを開始してから、2023年2月8日時点で、6,385,400円のご寄付をいただきました。心よりお礼申し上げます。

2021年2月1日のクーデター後、多くの公務員が市民不服従運動(Civil Disobedience Movement、以下CDM)に参加しました。CDMは、政府への抗議の意を示すデモや公共料金の不払い、店の営業取りやめなど、様々な非暴力の運動です。これに対し、ミャンマー国軍は実弾を用い、CDM参加者を殺害しています。

CDMに参加した公務員は、職場に戻れなくなり、多くの人が国内避難民として今も静かに抵抗を続けています。ミャンマーの国内避難民数は増え続け、2023年2月6日時点で161万8,200人に上ります。

国軍は法律を改正し(条項505Aの追加)、国軍を批判する投稿をSNSにしただけでも逮捕されるようになってしまい、今は情報発信すら難しくなっています。CDMに参加した人がいないか、ミャンマー国軍は、スパイを用いたり突然家に押し入ったりして探し、見つけ出すと逮捕や拷問、死刑、殺害などが待ち受けています。CDMに協力した人も捕まってしまうため、CDMに参加したいけれども仕事を失いたくない人は、連帯の意を表明することすらできません。

CDMに参加した人が避難し住んでいる家

CDMに参加した人が避難し住んでいる家

ミャンマーでは、必ずしも高給ではないものの、公務員(看護師、警察、教師等)であることはステータスであり、市民から尊敬の対象とされてきました。

しかしクーデターに参加し職を失ったCDM参加者は、職を失っただけでなく、国軍から逃れるために住む場所も失い、公務員というミャンマーでは特別なステータスも失いました。そのためCDMに参加した人は、金銭的にも精神的にも、とても厳しい状態にあります。

このようなCDMに参加した人や国内避難民の方への支援のため、ヤンゴンと周辺地域で、皆様からお寄せいただいた3,944,960円のご寄付を用いて支援活動を行いました。

具体的には、

食料を手渡しています

医薬品を手渡しています

配付した食料

配付した家庭用医薬品

支援を受け取った方々からのメッセージはこちらに掲載しています。ぜひご覧ください。

この活動は、現地で活動する支援団体のおかげで実施することができました。弾圧が厳しくなる中、支援を実施してくれた現地団体からの声もご紹介します。 「支援を実施するスタッフだけでなく、支援を受け取る方々の安全を確保することが大変でした。支援を受け取ったことが知られると軍から逮捕される可能性があり、目立たないよう慎重に活動を実施しました。」

CDMに参加せずに、今も公務員として働き続け、給料をもらっている元同僚を見ると、とても辛い気持ちになると、あるCDM参加者は言います。彼と彼の妻は公務員で、市民の側に立ちたいと、CDMに参加しました。職と家を失い、少数民族地域の田舎に移動し、潜伏生活の中で初めての子どもを授かりました。生活費はずっと親族頼みでしたが、これ以上はもう頼めないと、子どもが6か月になった時、妻と子を残し、一人マレーシアに出稼ぎに行くことを決意しました。CDMに参加したことが国軍にばれると、捕まってしまうため、空路での移動はできません。そこで彼は、タイ経由でマレーシアに行くことを決意しました。マレーシアに行くためにブローカーが要求してきたのは18万円。そんな大金を持ち合わせていなかった彼は、なんとかブローカーに頼み込み、一部後払いを約束してマレーシアに向かいました。しかしタイで摘発され、今はタイの拘置所にいます。拘置所では衛生用品が不足し、食事はスープでご飯はほとんど無いそうです。

タイ政府は、ミャンマーから逃れてきた人をミャンマーに追い返しています。これは明らかな国際法違反です(ノン・ルフールマン原則)。 タイ政府は、タイ国内にはミャンマーからの難民はいないと説明しています。しかし、先ほどの彼のように、ミャンマー国軍から追われ、生き延びるためになんとかタイに逃れようとする人は多くいます。タイに無事にたどり着けたとしても、言葉も文化も違うタイで生活するのは本当に大変で、正式な在留資格が無いとすぐに逮捕、拘留、強制送還されてしまいます。

そこでパルシックは、タイのチェンライ県で、在留資格を持たないミャンマー人が、正式な在留資格を取得できるよう支援する事業を日本政府資金(ODA資金)で実施しようとしました。しかし、何度掛け合っても、日本政府としては、チェンライ県にはミャンマー難民はおらず、いるのは金稼ぎが目当ての人だけであり、そのような人を政府としては支援できないと説明され、事業は実施できませんでした。

先ほど紹介したCDM参加者の彼は、金持ちになりたくてタイに来たわけではありません。クーデターにより職を失い、ミャンマー国軍に命を狙われ、家族を養うため、どうしたら生き延びられるかを考え、大きなリスクと知りながらも、それ以外に道が無く、タイに辿り着いたのです。チェンライ県にミャンマーから逃れてきた人はいないという、明らかに事実ではない説明を繰り返す日本政府の言葉を鵜呑みにするわけもなく、事業の不承認は全く納得のいかないものでした。

この事実を知ったある寄付者から、ぜひタイに逃れたミャンマー人のために私の寄付金を使ってほしいというありがたい申し出がありました。そのご寄付90万円を用いて、2022年11月から、タイのチェンライ県にある提携団体Aid Center for Migrant Workers in Chiang Raiを通じて、ミャンマー人移民労働者が正式な労働許可を得られるよう支援を実施しました。この内容についてはまた別の記事でご紹介したいと思います。

残りのご寄付約150万円は、ミャンマー国内の少数民族地域の子どもたちが学校で勉強を続けるために必要な文房具の購入に使いたいと考えています。 CDMに参加した公立学校の教師は学校に戻ることができず、したがって多くの学校が休校しています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年9月に学校は休校となっていたため、もう2年以上公教育を受けていない子どもたちが多くいます。

元教師たちの一部は、宗教施設や仮設住宅のような建物で、学校に通えない子どもたちに授業をしています。しかし公立学校とは異なり、給与は出ないため、生徒たちの親からの少額の寄付だけで、ほぼボランティアで授業をしており、生活は困窮を極めています。子どもたちもお金が無く、なかなか文房具を買えない状況です。

そこでパルシックでは、先生たちの給与と学校の教科書、そして子どもたちの文房具を支援する活動を始めました。いただいたご寄付のうち150万円程度を、こちらの事業で使用しようと考えています。こちらもまた別の記事でご紹介します。

仮設学校の子どもたち

2021年2月1日のクーデターから2年。ミャンマーの状況は悪化の一途を辿っています。 ミャンマー国軍は今月、非常事態宣言を6か月間延長し、戒厳令を発令している地域を増やしました。

一方、国民統一政府(NUG)首相は、今年中にミャンマー軍評議会(国軍)を打倒すると、ミャンマー国民に対して明言しました。 このような状況で、今後、各地で緊張が高まることが予想されています。

パルシックでは引き続き、ミャンマーでの活動を実施していきます。 どうか今後もミャンマーを忘れずに、ご支援いただければ幸いです。 どうぞよろしくお願いいたします。

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(パルシック東京事務所 ミャンマー事業担当)

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