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マレーシア

2023年度夏のマレーシア・ペナンでのフィールドワーク実施

今夏は、3大学[1]の学生がフィールドワークでマレーシア・ペナンを訪問し、コロナ禍以降4年ぶりに、現地での本格的な実施となりました。加えて、1大学のオンラインでのフィールドワークに協力しました。

マレーシアでのフィールドワークは、多様な人びとに出会い、多民族多文化社会でのコミュニケーション力(主に英語)をつけ、社会課題についてディスカッションし、これからの社会での自分自身の在り方を考える機会を提供します。今回は、現地の大学生(マレーシア科学大学:USM)と交流する時間を増やし、同じ時代を生きる同世代が同じ経験を共有することで学び合うことに期待しました。

ボートで川下りし、マングローブの生態を観察

多民族・多文化が混ざり合う世界遺産の街ジョージタウンの街歩きや、漁民グループPIFWAとのワークショップ、パームオイルプランテーションの見学、現地NGOやUSMの学生と環境問題や移民の受け入れについてのディスカッションをし、マレーシアと日本という国を越えた学びだけではなく、世代間、人種間での学び合いがありました。

パームオイルプランテーションを訪問して、アブラヤシの実を見る参加者

現地の大学生とグループワーク

学生たちは、マレーシア、特に、ペナンの社会が醸し出す人びとの寛容さや自由さを感じ、その背景にある歴史や文化、多民族社会の在り方について話し合い、考えを深めていきました。他方で、日本とマレーシアとの経済格差がなくなりつつあり、相手を経済的に援助して日本と同じような経済発展をすることでは今直面している社会課題は解決しない、ということを実感し戸惑っていました。NGOでの就職を希望する学生にとっては、マレーシアでは「助ける」ことを期待されていないことへの気づきは大きなことでした。

村の人たちを前に日本人とマレーシア人の学生が協力してグループ発表を実施

今年のフィールドワークの振り返りでは、「マレーシアの若者の投票率、政治への関心の高さに驚いた」「社会の変化のために自分たちももっと政治のことを知りたいし、学ぶ必要がある」という発言が多く聞かれたのが印象的でした。現地大学生との交流、日本とマレーシア社会の課題についてディスカッションすることで、それまで関心を持ってこなかった政治が、日本社会の課題の一つとして浮かび上がったようです。また、参加学生からは「国や文化を越えた人との交流が増えることで、日本社会がより寛容になり、若い人たちが希望を持てるようになってほしい」との感想も聞かれました。

漁村での民泊先で子どもたちや村のお母さんと交流

ペナンでのフィールドワークは、これからの進路を考えるにあたり、社会の「課題」だけでなく、個人が「生きる希望」を見つける場にもなってほしいと願っています。

(マレーシア事業担当 大塚照代)

[1]大学は、漁村でのマングローブ植林活動とホームステイ体験のみ協力