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漁業復興支援

来年の収穫に向けての十三浜ワカメやコンブ養殖のはじまり

今回は、来年に向けた十三浜の漁師さんたちの養殖作業のお話をします。

十三浜産のワカメは、三陸の中でも品位の良さで有名です。もちろん、河川、海流や地形等の自然環境条件が質の良いワカメを育んでいるのですが、これまで、漁師の皆さんがこの地にあった養殖技術を研究開発し、また生産された質の良いワカメを全国的に広く普及販売してきたことも、有名になっている要因だと思います。

震災後に、宮城県漁協十三浜支所では、いち早くワカメ養殖復活をめざし、漁師の皆さんと一丸となって推進されてきました。十三浜支所運営委員長の佐藤清吾さんのお話では、ワカメ養殖生産は震災前の水準にほぼ戻ったということです。

今年も11月から12月上旬頃まで、来年3月からの収穫をめざし、ワカメやコンブの種付け作業が各浜で行われています。これは、6月から7月にかけて、陸上のタンク内でワカメのメカブから遊走子(ゆうそうし)※1 を放出させて天然繊維や化繊ロープに付着させ、その後1cm程度に発芽したワカメが付着した種糸を1cmから5cmに切り、それを一定間隔で養殖用親縄(長さ130m)に挟み込み、沖の養殖施設に垂下する一連の作業です。この小さなワカメが、来年の3月からの収穫時には1m以上2m近くまで成長し、収穫されます。

ワカメ種糸の挟み込み作業

ワカメ種糸の挟み込み作業

コンブの種付け作業も、ワカメとほぼ同様な方法により陸上タンク内で付着させ、発芽した種糸を1cm程度に切り、親縄に挟み込みます。ここ十三浜では、異なった成長条件や限られた養殖漁場を有効に使う方法として、ワカメ養殖親縄の下にコンブ養殖親縄を垂下する複合養殖の方法がとられています。ワカメ収穫は3月頃から4月頃までであり、コンブ収穫は5月頃となり連続した生産が可能となっています。

ワカメ種糸が挟み込まれた養殖親縄

ワカメ種糸が挟み込まれた養殖親縄(白いロープ上に見える黒っぽいものが小さなワカメ)

十三浜では、一連のワカメやコンブの種付け作業が終わると、引き続き来年以降の収穫に向けて、ホタテ半成貝※2  の耳釣り※3 や、かご入れ等の養殖作業がはじまります。
 (石巻北上事務所 岩尾恒雄)

 

※1 遊走子・・・シダ植物・コケ植物および藻類、菌類(キノコ・カビ・酵母など)などが、形成する生殖細胞が胞子であり、鞭毛(べんもう)を持って運動する胞子を、遊走子と呼ぶ。遊走子は、岩礁等に付着し、いくつかの形態や生活史を経て、ワカメに成長していく。

※2 半成貝(半生貝)・・・天然採苗し、一年くらい養殖漁場で育てた殻長8cm前後の大型のホタテ稚貝。十三浜では、主に北海道産のものを使用する。

※3 耳釣り・・・ホタテの垂下養殖方法の一形態。ホタテ稚貝の耳(貝殻の蝶番の近く)に電動ドリルで小さな穴をあけ、その穴にロープに固定したテグス若しくはプラスティック製ピンを通し、養殖漁場で商品サイズまで養殖する方法。